すべての犯罪者は、かつて平凡な市民だった。
東京都写真美術館なんてよっぽどのことがない限り行かないのだが、「オランダの光」を見るついでに展示をひととおり見てきた。
まず、「写真新世紀2004」。「チョコレート・ドリームス」っていう作品が凄かった。溶かしたチョコレートで作られたオブジェクトを撮った作品。作者は電通の社員らしいが、電通的マーケティング臭の一切しない、混沌とした世界だった。でもチョコだから甘いっていう、ファンタジー。
2003年度グランプリの容量1ギガバイト、総画素数2億ピクセルの写真もヤバかった。現実を切り取るどころか、実物がそこに存在するかのような。スーパーリアリズムなんてメじゃない。っていうかこれは写真なのか?
同時開催の「明日を夢見て/アメリカ社会を動かしたソーシャル・ドキュメンタリー」展も良かった。あまりにもいいんで、パンフも買っちまった。
目的の「オランダの光」なんだが、感覚でしか理解できない「光」を追っているドキュメンタリー映画なので感想を書きにくい。その前に見た展示のインパクトが残っていたので、多少退屈ではあった。でも、オランダの自然、空模様、車で移動するフッテージをフィルムの大画面で見れただけでも満足。
だけど、映画では触れられていない、空気の臭いや温度も、風が肌に当たる感触も、実はあの光景、オランダの光の重要な要素なのではないかと思う。特にオランダに行ったことの無い人間には。そういう要素までフィルムに焼き付けることはできない。どんなに素性の良いレンズとフィルム、高性能なマイクを使って音を撮っても、オランダの名匠たちが描いた光や空気はフィルムでは再現できないし、感じる事は出来ない。当たり前の事だけど。実際に現地に行って、自分の目で見ないことには。オランダ、いつか行ってみたい。
もう一本くらい映画を見たい気分だったので、「照明熊谷学校」の特集上映としてやっていた「太陽を盗んだ男」を見た。
これは凄い。こんなパワフルな日本映画があったとは。不死身の菅原文太がめちゃくちゃカッコいい。カルト的人気を博しているという理由も分かる。観客がみんな40,50代の人たちで、笑う所がみんな一緒。「江戸川乱歩全集・恐怖奇形人間」を見た時の様な、妙な一体感を感じた。日記のタイトルはこの映画の公開当時のコピー。
監督の公開当時の発言より。
「『太陽を盗んだ男』は要求のない時代に生きる俺自身のメッセージだ」