FilmMaker Ishikawa Shingo

「蘇りの恋」「カササギの食卓」「出発の時間」「あさごはん」などの映画監督、石川真吾のブログです。

転がる石に苔は生えない

脱稿してクライアントに送った。寝ぼけ眼で外へ出ると、太陽は鋭く空はニコチン色だった。ともかく半年間の仕事を終えた自分への褒美として、はなまるうどんで「大」を頼んだ。一刻も早く書いたものを忘れようと、DVDを見てたらいつの間にか寝ていた。翌朝、コーヒーを飲みながら自分が書いたものを読み直す。あああ、これは「寄生獣」じゃないか。まったく意識せず書いたのに。

複製の廃墟に生まれたきみたちは、思いついたアイデアのことごとくに元ネタがある。ポストモダン後の世界で動物化してぬるぬる消費やりながら適当にコピーバンドやればいいよ。たかが映画じゃないか。たかがジャリ向けゲームじゃないか。これは作品じゃなくて商品。きみのこだわりなんて不要。きみはだれでもない。きみの署名入りで商品が売れるくらいネームバリューが付いてから、こだわれよ。名無しくん。我々の言うとおりの、らしきもの、映画らしきもの、ゲームらしきもの、小説らしきもの、音楽らしきものをつくれよ。作家きどりしやがって。おれはぐうの根も出ない。やってらんねえよ。おれはそう言って原稿を破り、フィルムを縦に切り、マスターテープを燃やす。ははは。そうやってオリジナルを破棄することが勝利なのかい?ロックかい?パンクなのかい?そんなアティテュードはもはや絶滅している。デジタル万歳。データのコピーはちゃんと残っているのだ。無駄なあがきはやめろ。きみは複製の廃墟から一歩も外に出れやしない。出れたと思ってもそれは錯覚だ。複製の廃墟とは、バベルの図書館なのだよ。真にオリジナリティのあるやつは狂人だとよく言われるがね、17の多重人格を持つ少女の人格がすべてアニメキャラだったという症例からもわかる通りだ。きみたちの想像力などたかが知れている。あまりにも多くのものを作りすぎた。諦めて適当な労働者になれ。奴隷の身分が一番楽だぞ。……ちくしょう、こんなときはあの至言を思い出して勇気を奮い立たせるしかない。どんな理屈も冷酷な事実も、ダイヤのようなこの言葉にはかなわない。それはこの言葉だ。
でも、やるんだよ!

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