FilmMaker Ishikawa Shingo

「蘇りの恋」「カササギの食卓」「出発の時間」「あさごはん」などの映画監督、石川真吾のブログです。

数億匹の骸たちについての鎮魂歌

アンヴィル!夢を諦めきれない男たち」を観た。冒頭から胸がキュンキュン締め付けられてずっと泣きながらもあははと笑って観ていた。今年もいろんな傑作があったけど、あの「グラン・トリノ」よりも「レスラー」よりもずっと、グッと来た映画だった。

そんな「アンヴィル!」の劇中で、元ガンズ・アンド・ローゼスのアクセルがこんなことを言う。「30年間おんなじバンドをやってるってのは本当にスゴイ。オレが知ってるのはこの3バンドだけだ。ローリングストーンズ、ザ・フー、そしてアンヴィルだ」

そう、同じことをず〜っとやっているってのは本当にしんどいし、退屈だけど、尊敬すべきことなのだ。人間は変わらないでいるより、変わるほうが簡単だ。成長を拒否したら人は生きてはいけない。大河のように、大樹のように、万物流転、生々流転のなかで変わらないでいることは本当に難しい。同じ会社に40年もいるようなサラリーマンとは話が違う。彼らはお金をもらっている。アンヴィルは借金してでも新作のレコーディングをするし、クソみたいな仕事だと言いながら給食を運ぶ。誰からも評価されず、迷惑をかけながらもロックすることをやめられない。

さて、日本にもそんな人はいるかしら。なんて思っていたら、いたよ。この人だ。三峯徹である。

ん?知らない?そんなあなたは大馬鹿である。三峯徹とは、20年間エロ漫画の読者投稿欄にハガキを送り続けた、奇才である。エロ漫画を一度でも買ったことのある男性諸君なら、もはやアウトサイダーアートの感もある、この強烈な氏の絵を見たことのないものはいないであろう。なんせ、

・最盛期には成年漫画誌を月に40〜50冊購入し、100枚以上のハガキを投稿。現在も30誌以上を購読している
・今でも、ほぼ毎日ハガキイラストを書いている
http://www.menscyzo.com/2009/11/post_515.html

今でも毎日ハガキを書いている!ロックすぎる。性欲余らせまくっていた中学生時代、三峯氏の絵はかなりの嫌悪感があった。なんせヘタクソなのである。デッサンなど知ったことかという異様なバランス、謎のポエム。小遣いはたいて買ったエロ本でなんでこんな絵を見せられなきゃならないのかと怒り出す始末であった。しかし、次の号を買っても、三峯氏の絵は掲載されていた。別のエロ本を買っても氏の絵は掲載されていた。物好きもいるもんだななどとのんきに思っていた。

時は過ぎ、大学生になって、久しぶりにエロ本を買ってみた。そこにも、三峯氏のハガキは掲載されていた。相変わらずヘタクソなままであった。ぼくは恐怖した。この人はいったいなんなんだ、頭がおかしいんじゃないかと本気で思った。さらに数年が経ち、エロ本など買わなくなって、大学を卒業した。たまたまワニマガジン社で仕事をする機会があり、なんとなしに三峯氏のことを尋ねたら、ある編集者の方は未だに毎月投稿があると前置きし、こう言った。
「うちの本は三峯さんで持っているようなもんですから。」
その時、ぼくの嫌悪感は、尊敬心に変わった。以来、氏のイラストが載らないエロ本は、駄目なエロ本であるという基準が出来た。今月号の快楽天にも、三峯氏のハガキは載っていた。相変わらずヘタクソである。しかし、10メートル先でも分かるような偉大な個性のある氏の絵に、パンツをあげたあとのぼくは心底安堵するのである。

そんな氏を応援しているのはぼくだけではなかった。なんと、氏の20周年記念として、トークイベントが開かれたというのである。無名のいち読者なのに。当日行けなかったのが実に悔やまれる。30執念記念イベントが開かれたら、ぼくは必ず駆けつける。ローリングストーンズ、ザ・フーアンヴィル三峯徹

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