FilmMaker Ishikawa Shingo

「蘇りの恋」「カササギの食卓」「出発の時間」「あさごはん」などの映画監督、石川真吾のブログです。

夢はひとつの恐怖であり、若者が夢を延命する装置が共同生活だ。

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『テラーオブハウス@ユーロスペース

監督 角田裕秋  原案 にがウーロン  脚本 シーズン野田
 『テラスハウス』をホラー方向にパロディした映画である。ただ、僕は『テラスハウス』は未見である。男女の若者数人を一つ屋根の下に住まわせて恋愛関係になるのを狙うリアリティー・ショー番組らしい。さて、本作『テラーオブハウス』は夢を追う男女6人が集う共同生活場で、テレビ番組の撮影ということで集まった6人が、実は皆死亡している、というのが軸となる物語である。そう、夢を追うというのは、死んでしまうことも覚悟しなければならないのかもしれない。夢が破綻したときは恐怖である。破綻していることにも気づけないのはもっとホラーである。登場人物たちの夢はバラバラだが、典型的である。少女漫画家志望、お笑い芸人志望、ミュージシャン志望、特殊メイクアップアーティスト志望、そして女優志望が2人。女優志望の新入りが本作の主人公である。
 6人の仲よさげな共同生活に侵入する、夜ごと響くノックの音。ガラスが割れる音。窓から覗きこむ不気味な女、とホラー的な要素が入ってくる。しかしホラー的に言うと、まったく怖くはない。「にがウーロン」というのはコントトリオで、僕のムサビの後輩である。彼らは在学中からにがウーロンを結成してお客を集めて、長年活動している。基本的に彼らの基調はギャグである。坂元パルムが登場するだけで笑いを取れる。だので本作もギャグいっぱいにエンドマークまで進む。ホラーや夢追い人たちの青春群像劇を超えて、SF的な地点に着地しながらも、コメディタッチというのは忘れない。1シュチュエーションものでここまで飽きずに見せてくれる手腕は素晴らしい。笑いのセンスがじつに現代的で面白い。
 この映画を観ながら考えたこと。夢はひとつの恐怖であり、若者が夢を延命する装置が共同生活なんではないかということだ。儲かるビジネスのキーワードは「健康か夢」である。老人は健康、若者は夢を求める。東京には夢をエサに地方からたくさんの人がやってくる。学校であったり就職であったり彼らの自己実現の夢は様々だ。しかし、夢はあっという間に悪夢に反転する。生活という現実に彼らは殺される。若さは永遠ではなく、むしろ一瞬だ。東京には夢に死んだ死体がゴロゴロ転がっている(と、僕は思っている)。そういう現実ってあるんじゃないか?というのを悪夢の形で見せてくれるのもこの映画の面白いところである。

 

ケツ犬(1) (エデンコミックス)

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