今週のお題「いま学んでみたいこと」
- 作者: ジェームス W.ヤング,竹内均,今井茂雄
- 出版社/メーカー: CCCメディアハウス
- 発売日: 1988/04/08
- メディア: 単行本
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僕がものの考え方、学び方に大きく影響を受けたのは「アイデアのつくり方」という本です。アメリカの大手広告代理店の方が書かれた、とっても短くて読みやすい本で、「アイデアとは既存の要素の新しい組み合わせ以外の何ものでもないということである」というテーゼは非常に有名かつ本質的である。
学生時代のことである。上記の竹熊健太郎氏のブログで読んで、すぐに『アイデアのつくり方』を注文して読んだ。あっという間に読めたし、その内容はWEBに書いてある紹介文とたいして変わらなかった。新鮮な感じがしなかった。それは、本著のような考え方がすでに一般常識のレベルまで共有されているから、新鮮ではなかったのではないか。と今にして思う。
もう一つ、僕が感銘を受けたのは「第一が原理、第二に方法」というくだりである。これはあらゆる仕事、学習、生活において通づる真理であるような気がする。順番を間違ってはいけない。方法を知ってから原理を学ぶのではないのだ。
例えばカメラを買う。身の回りのものを撮ったりして遊ぶ。なぜシャッターを切った瞬間がモニターに映像として表示されるのか?物質界はそもそも光によって成り立っていて、その光をレンズが集め、適切なシャッタースピードと適切な絞りをマイクロチップが演算し、CCD/CMOS(画像処理センサー)に送られ、画像処理エンジンに送られJPGなどの画像ファイルとなる。それをモニターに映し出し、これはこう撮ったほうがよかったかもしれないなどと「方法」を試行錯誤しだす。光→レンズ→CCDというのは「原理」である。武蔵美の1年生のときに退屈な「カメラの原理」というような授業があってそこで叩き込まれた。撮像箇所がフィルムからデジタルに変わり、極小サイズのカメラやiPhoneが出てきてもその原理は不変である。
映像学科は「カメラ・オブスクラ」というものを入学間もない頃に作らされる。これは『暗い部屋』という意味の、部屋版ピンホールカメラであり、ギリシアで生まれたカメラのすべての原点となる原始的な装置である。
カメラ・オブスクラの原理は、ちょうどピンホールカメラと同じようなものである。原始的なタイプのカメラ・オブスクラは、部屋と同じくらいのサイズの大きな箱を用意し、片方に小さな針穴(ピンホール)を開けると外の光景の一部分からの光が穴を通り、穴と反対側の黒い内壁に像を結ぶというものであった。画家がこの箱の中に入り、壁に映った像を紙の上に描き移すことで、実際の光景とそっくりの下絵をつくるという使い方がされた。
https://ja.m.wikipedia.org/wiki/カメラ・オブスクラ
映像というものを13年間やってきて、写真が映る原理を理解しているということがどれだけ役に立ったか分からない。この原理はカメラマンだけが理解していればいいというものではない。知らないことは罪ではないし、僕は教えるのが好きだから、それでコミュニケーションが生まれたりもする。映像制作はチームプレイだから、他部署のことはなにも知らない、ということが致命的なクリエイティヴの遅延を引き起こすこともあるのだ。役者だって、ヘアメイクだって、制作部だって、映像の原理を知っていればずいぶんとコラボレーションが楽になるということもあるだろう。基礎となる原理を理解していれば、応用が効く。
「第一が原理、第二に方法」はまた、自分が知らないことについても、学びの導線を与えてくれる言葉である。「◯◯のプロです」という人はやっぱり原理をしっかり理解されているので尋ねても明快な回答が来る。だからプロフェッショナルとお話しするのはまことに楽しい。科学現象も人の心も芸術活動も、なんらかの原理で動いていて、方法がある。このブログを読んでくださっているあなたもぜひ、第一に原理、第二に方法という言葉だけでも覚えて帰っていただければと思います。複雑な世界に立ち止まってがんじがらめになる前に、自分の目の前にある糸が蜘蛛の糸なのか釣り糸なのか区別することのできる知恵と原理を持てることを願います。そうすれば現状を脱出する方法をあなたは編み出すことができるはずだから。
神よ願わくばわたしに変えることのできない物事を受けいれる落ち着きと、変えることのできる物事を変える勇気と、その違いを見分ける知恵とをさずけたまえ
(ニーバーの祈り)
スローターハウス5 (ハヤカワ文庫SF ウ 4-3) (ハヤカワ文庫 SF 302)
- 作者: カート・ヴォネガット・ジュニア,和田誠,伊藤典夫
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 1978/12/31
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