FilmMaker Ishikawa Shingo

「Hairs」「Food 2.0」「スティグマ-STIGMA-」「裸で汁を出すだけの簡単なお仕事です。」「ラジオスターの奇跡」「蘇りの恋」「カササギの食卓」「出発の時間」などの映画監督、石川真吾のブログです。

飯沼珠実写真展「FROM LE CORBUSIER TO MAEKAWA」

飯沼珠実写真展「FROM LE CORBUSIER TO MAEKAWA」@新宿ニコンサロン

 

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飯沼珠実写真展「FROM LE CORBUSIER TO MAEKAWA」 - デジカメ Watch

 

コルビジェの建築、そしてコルビジェの弟子である前川の建築の直線と、それを切り裂く木々と陽射しのコントラストが美しい。灰色=コンクリートと緑=木の2色が、調和するのが東京という都市である。ベルリンやパリ、ケルン、東京と、撮影地をバラバラに展示しており、建物と自然とのバランスに各国の文化の違いを感じる。表題の写真は上野の国立西洋美術館前川國男東京文化会館である。上野は森というのがふさわしいくらい自然が豊かだ。日本人は自然と共生して生きてきたのだ。この人口過密都市、東京でも。

飯沼珠実の写真は常にコンセプチュアルである。写真が切り撮る比較文化論である。だが今回の展示でいいなーと思った点は、論文にはおさまらないなにかがあるなということだった。きっと彼女は陽光がきらめく一瞬に、どうしてもシャッターを切りたいという欲望が生まれたのだろう。その反射神経のような一瞬が刻印されている。

飯沼さんとは出会いはもう14年(!)も前になる。美術予備校で同クラスだったのだ。互いに17歳であった。頭が抜群によくて、都会的なセンスを持ち合わせた女性だった。その後、同じ大学のキャンパスで4年を過ごした後も、年に1回はくらいは飲み会で会って近況を報告しあっている。海外への留学経験も豊富で、僕なんかとは比べ物にならないくらい広い視野で都市や人間というものを捉えているのだろう。「部屋の角」を都市の最小ピースと捉え、構造的に都市を見つめる写真、というアイデアには驚愕したものである。ニコンサロンを出ると、彼女が撮った静謐な都市とはまったく異なる、賑やかで猥雑な新宿西口が広がっていた。