FilmMaker Ishikawa Shingo

「Hairs」「Food 2.0」「スティグマ-STIGMA-」「裸で汁を出すだけの簡単なお仕事です。」「ラジオスターの奇跡」「蘇りの恋」「カササギの食卓」「出発の時間」などの映画監督、石川真吾のブログです。

Don't Follow the Wind 展を見にいった、とは言えない


ライターの木村奈緒さんにオススメされたので、『Don't Follow the wind ーNon-Visitor Center』展をワタリウム美術館に見にいった。素晴らしかった。

本展は、広島の空に飛行機で「ピカッ」という文字を描いたり、岡本太郎の「明日への神話」に原発を描きたしたりと、なにかとセンセーショナルな活動で注目されるアーティスト集団、Chim↑Pomが発案したものである。ガイド文を引用する。

本展覧会「Don't Follow the wind ーNon-Visitor Center」は、福島の帰還困難区域で開催されている展覧会「Don't Follow the wind (以下、DFW)のサテライト展です。

「DFW」は、2015年3月11日にはじまった国内外12組のアーティストによる国際展です。しかしこの展覧会「DFW」は、「今」は直接見ることができません。それは会場が2011年3月11日の東北地方太平洋沖地震による東京電力福島第一原子力発電所事故に伴う放射性物質による汚染のため、一般の立ち入りが制限された地域にあるからです。「DFW」は政府によって区域の封鎖が解除される「そのとき」まで人々の想像力の中で見られ続ける展覧会なのです。

そのような状況をふまえ、本展では「DFW」にまつわる資料展示や、帰還困難区域に設置された作品に関連した各作家の展示、そして「DFW」のドキュメント映像などを展示しています。これは、4年以上たった現在もなお多様で深刻な問題が続く事故に対し、アーティストたちが真摯に向き合い、さまざまな角度から鑑賞者の想像力を喚起する試みです。


この展示は「仮」の展示である。帰還困難区域に「真の」展示場がある。↑これはその鍵である。

コンセプトも素晴らしいし、デザインもキュレーションも良かった。

思えば「風」を感じる展示だった。園子温のドキュメント映像では、通常の映像作りでは嫌われるボボボという風切り音がつねに響いていた。一時期、音屋をやっていた僕からしたら不快な音声だ。だが、ボボボという「吹かれ音」ほど風を感じるサウンドもないのだ。ドキュメントも、展示も、音の鳴る作品が多数あって、ボコボコ風に吹かれていた。

Don't Follow the Windとは「風を追うな」という意味だそうだ。原発事故後、みんなが北へ逃げる中、海釣りの経験があって風の流れを読むことができ、逃げる方向が違うと気づき東京方面へ逃げたという被災者の話に由来しているんだとか。Chim↑Pomリーダーの卯城さんは「風化、風評、原発事故後に関しては、風にまつわる言葉が多い。風は見ることができないし、見ることができないものに汚染もされた」と説明する。

僕はこの展示を見たとは言えない。不完全なものを見てしまったのだ。真にかれらのアートを堪能できるのは福島の帰宅困難区域が解除された時だ。

《ウェブサイト》Don't Follow The Wind.