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FilmMaker Ishikawa Shingo

「蘇りの恋」「カササギの食卓」「出発の時間」「あさごはん」などの映画監督、石川真吾のブログです。

2016年を映画などでふりかえる

新作ベスト

  1. この世界の片隅に
  2. 淵に立つ
  3. 無垢の祈り
  4. クリーピー 偽りの隣人
  5. FAKE
  6. 退屈な日々にさようならを
  7. SCOOP!
  8. シン・ゴジラ
  9. 川越街道
  10. リリカルスクール未知との遭遇

とにかく『この世界の片隅に』に尽きる1年だった。初日に観て翌日に観て、計4回観たし広島と呉に聖地巡礼してしまった。何回観ても泣く。サントラとパンフと原作買い直しもした。ただこの作品の真の原作は戦争および近現代史である。私が非常に弱い分野でもある。この映画を観て、映画というものは大なり小なり何らかの歴史(=世界)と関わっていなければ駄作になる、というか作る意味がない。とまで思うようになった。表現とは、何か太いもの(歴史、世界)に繋がっていなければいけない。それが民衆の支持を集める(クラウドファンディング)し、興行成績に繋がる。
そしてこのベストテンランキング、何とすべて邦画!本当に邦画黄金時代なのかもしれない。無垢の祈り、川越街道、リリカルスクール未知との遭遇、ハルをさがして は私がスタッフであるが、劇場で観た印象でフラットに順位を付けた(つもり)。邦画当たり年に少しは貢献できたであろうか。洋画ではローグ・ワン、ザ・ウォーク、オデッセイ、など忘れ難いタイトルもあった。

 

ワースト

  1. エヴェレスト 神々の山嶺
  2. 君の名は。
  3. ヒメアノ〜ル

君の名は。は楽しめたのだが根本的な運命の人は必ずどこかにいるという思想が気持ち悪い。200億越えの大ヒットか知らんが、教育上悪いと思うよ。
ヒメアノ〜ルサイコパスに生まれて殺人を犯さざるを得ない人間の悲しみを描いた原作から、いじめられヤケになり人を殺してまった人間というように改変されている。ストーリーやキャラは原作にかなり忠実なだけ、根本的な世界観の変更に僕はかなり不満が残った。ヒミズにせよ古谷実漫画はどうも根本的なエッセンスを読めてない人間にばかり映画化される気がする。
エヴェレストの漫画も原作も非常に素晴らしいのにどうしてこんなに金かけてこんなしょうもない出来のものが出来るんだ全く。山の鬼のような男に感化されてエヴェレストの頂点を踏む男の話なのに、山頂目指さなくなるストーリーなんてあり得るかいっ!下手なシナリオにミスキャスト、too muchな音楽とすべてが空回り。

 

ポスト真実の中でナラティブに生きる

今年春に長年私を悩ませてきた病名が診断された。自分が分かったし、生まれ変わったようだった。夏は富士山の山小屋でバイトをした。楽しかったし、色々見えるようになった。金を使わなかったおかげでマックが買えた。オリンピックがあって、SMAPが解散し、こち亀が連載終了した。ブレグジットが起こって世界経済がピンチになってトランプ大統領が誕生し、韓国では民衆のクレームで大統領が弾劾された。

ポピュリズムの世紀だ。「ポストモダン」ならぬ「ポスト真実」という呼び方もあるようだ。ますます世界が不明瞭に複雑になっていく中で、個人はできるだけ感情に流されずに複雑さに耐えて行かねばならない。その中で、個人の価値観はシンプルにミニマムな方が良いと思う。シンプルに複雑な世界を腑分けする。ツールはなるべくシンプルに。映画が与える感情の波と、ナラティブがあなたの世界の見通しをなるべくクリアにしてくれることを願う。

『川越街道』K's cinema上映に寄せて

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本日より私がラインプロデューサーを務めました映画『川越街道』がで公開となります。ただ、愛されたい人々の群像ロードムービーです。連日18:35、新宿K's cinemaにて五日間限定の公開です。ぜひご来場ください。

 


岡太地監督『川越街道』 特報

なぜ今回の作品に参加したのか

『川越街道』の監督である岡太地は10年来の友人で、2005年のPFFで出会った。以来、互いの現場を手伝いあったり、仕事を振り合ったり、酒を飲んだりしている。そんな彼が10年ぶりに長編映画をやるというので手伝ってくれと頼まれたら断るわけにはいかない。どんな役職でかかわるかはその時点では決まっていなかった。

 

ラインプロデューサー

けっきょく僕がやったのは予算とスケジュールの管理がメインで、プロデューサーの補佐であり現場担当のラインプロデューサーという役職。制作部演出部より立場が上。5月に川越市や街道沿いをシナハンし、プロット作成にかかってきたあたりで僕は予算とスケジュールを管理しないといけないなと思うようになる。プロット作成は難航し、シナリオ執筆はさらに難航した。僕は7,8月は富士山の山小屋で働いていたので高度3000メートルで初稿を読んだ。この予算で撮れるわけがない。

 

ワークショップ映画とクラウドファンディング

ENBUゼミナール主催シネマプロジェクトに参加する俳優は、一定金額をENBUにおさめる。合計24人。岡組に割り振られたのは12人の俳優(の卵といっても失礼ではるまい)と、○○万円の制作費であった。映画製作でコストカットするのは非常に簡単で、ハコと出演者を減らせばよいのだ。場所(ハコ)は増えれば増えるだけ、交渉の手間、移動の手間、金額の多寡が増大し、仕事量を増やし、予算を圧迫する。『川越街道』はロードムービーのため、ハコも登場人物も膨大なシナリオになっていた。なるべく味をそこなわぬよう、そしてメインプロットを骨太にするように改稿していってもらった。それでも予算は足りない。そこでクラウドファンディングのMotion Galleryで小口出資を募り、50名、約80万円の支援金が集まった。

 

撮影開始、でも予算もスケジュールも超過する

 撮影は楽しかった。順調だった。がしかし予算もスケジュールも超過した。ポストプロダクションも順調にいき、いい映画になった。初号のスタッフキャストの素直な反応で手ごたえを感じた。ただ、私の仕事ぶりは落第だった。今日、劇場の扉が開く。これで観客からの反応が悪かったらかなりつらいなあ。ほぼ初めてのスタッフ、キャスト、映画業界の大先輩たちと絡めた。人間関係的にはいろいろ得るものがあったけど失うものもあったなあ・・・(自腹いっぱい切っちゃったし)楽しかったなあ。また映画やりたいなあ。皆さんが観てくれると次につながるのかもしれません。

「映画は、スクリーンと観客のあいだに現れる幻のような芸術である。観客が観なければ完成とは言えない」

 

川越街道 : 作品情報 - 映画.com

解説

ぴあフィルムフェスティバル2005で準グランプリを受賞した「トロイの欲情」などで知られる岡太地監督が手がけた長編作品で、40歳の引きこもり男が、母親を探して埼玉県川越市から東京池袋を結ぶ川越街道を旅し、その過程で様々な人と出会う様を描いた。川越市の一軒家で引きこもり生活を続け、酒とゲームに溺れていた40歳のサトシ。しかし、ある日、ずっと面倒を見てくれていた母親が家出してしまったことから、サトシは母の足取りを追って外の世界に足を踏み出す。埼玉県川越市から東京の池袋まで続く道を進むサトシは、怯えながらも様々な人との出会いを繰り返していく。映画専門学校「ENBUゼミナール」のワークショップ「シネマプロジェクト」の第6弾作品として製作された。

シネマプロジェクト第6弾 | ケイズシネマ

 

CINEMA PROJECT | ENBUゼミナールによる劇場映画製作俳優ワークショップ企画

 

ただ、愛されたい。
10年引きこもっていた40歳のサトシの面倒を見てくれていた母親が、突然家出した。その足取りを追って、埼玉県川越市から東京の池袋まで続く道を進む彼は、怯えながらも他人との出会いを繰り返していく。
倉庫で働き始めた園子は男に踏みにじられるが、ある女性に出会い、救いを求める。騒音を立てるアクション女優と小説書きの男は狭いアパートで愛しあい続ける。サトシが立ち寄るバイク店にいる店主と店員はお互いに言いたいことを言えない様子。生きる意味を語る池袋詩人とその恋人。そして旧知の男を見かけたサトシは、その男の背中を追っていく。

監督・脚本・編集:岡 太地
出演:金子岳憲 小西 麗 末延ゆうひ 金田侑生 古賀勇希 さほ 川島信義 南部映次 青坂 匡 小畑はづき 桑名 悠 笹原万容 横須賀一巧 川瀬陽太
撮影:平野晋吾|照明:小川大介|録音:岸川達也|スタイリスト:藪野麻矢|ヘアメイク:須見有樹子|助監督:平波 亘|制作:猫目はち|音楽:小野川浩幸|ラインプロデューサー:石川真吾|プロデューサー:市橋浩治|企画・製作:ENBUゼミナール
107min|カラー|スタンダード|Blu-ray|2016

≪シネマプロジェクト第6弾・イベント上映≫

【上映日】2016年11月26日(土)~30日(水) 合計5日間
【上映時間】18:35~
【上映劇場】新宿K’s cinema
【料金】一般¥1,500 前売・学生¥1,200 シニア¥1,000 リピーター割引¥1,000

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『ハルをさがして』公開に寄せて

本日8月6日より、私が編集と宣伝デザインを担当させてもらった自主映画『ハルをさがして』が公開されます。下北沢トリウッドで1日3回上映です。下北沢トリウッドといえば、自主映画の公開に寛容な劇場のはしりではないでしょうか。10年前、私が監督した『カササギの食卓』という自主映画の公開イベントをやらせてもらったのも下北沢トリウッドでした。

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『ハルをさがして』は福島版『スタンド・バイ・ミー』を目指して作られました。登場人物は男4人ではなく、男3人と女1人にアレンジされています。ヒロインへの恋心が男子中学生3人たちを動かし旅に誘います。『スタンド・バイ・ミー』は死体を探す話でしたが、『ハルをさがして』で中学生たちが探すのは、2012年の福島県の帰還困難区域に残された犬の「ハル」です。ハルをさがすうちに中学生たちはさまざまな「震災と死」に出会い、成長していきます。
 
ヒロインを演じた佐藤菜月さんはほぼ映画初出演ながら、繊細な役を堂々と演じきっています。今後の活躍が期待される期待の新人です。とても可愛らしい女優さんです。私は撮影現場に行っておりませんが、演技の面でも見違えるほどの成長があったと聞いております。
 
脚本・監督は私と同世代の尾関玄、その同級生のプロデューサーが内藤諭、この2人が中心となったISHIOが製作しました。私は尾関監督と商業映画の現場で出会っており、プロデューサーの内藤さんとは尾関監督が前回監督した短編映画の現場で出会いました。公私ともに世話になっている友人たちであり、たいせつな仲間たちです。
 
撮影は2014年の夏に都内と福島県いわき市、小野町で行われました。9月より尾関監督の母の家に編集室を作り、編集作業が行われました。年内いっぱいまで編集作業は進められ、ピクチャーロックとなりました。
 
監督がテーマソングとして考えていたのが甲本ヒロトさんの未発表曲「呼んでくれ」でした。郷愁を誘うピアノリフ、シンプルで味わい深いロックンロール、映画の内容にピッタリな歌詞が、この映画の方向性を決定付けました。音楽の使用許可を得る前に、映像と音楽がピッタリとシンクロするように編集を固めました。事務所からの使用許可が出なければこの映画はまったく別のものになっていたことでしょう。
 
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2015年頭にダビングを経て完成。渋谷にて初号試写。コワモテなラインプロデューサーとして活躍する尾関監督のピュアな青春映画に共感と感動の声が集まりました。その後、映画のロケ地である福島県小野町での一般向けの上映、中学生向けの上映、いわきPITでの有料公開などを経て、本日8/6よりとうとう東京上映となりました。
 
忘れられない感想の声があります。
 
私は津波を経験したことがないけれど、津波が人の心を持っていくことが分かりました。○○ちゃん、どこにいったのかなあ。
 
福島県出身でもない尾関監督がなぜ、ドキュメンタリーではなくフィクションで震災後の福島を舞台に青春映画を作ったのか?津波原発事故でコナゴナになった世界をどう生き抜くのか?少年たちの「選択」をどうぞ劇場で体感してください。
 
 
 
キャスト
小柴大河
佐藤菜月
小泉凱
小沢仁志
才藤了介
井上珠里
齋藤あきら
武藤令子
川崎裕子
蛭田智道
牧純矢
桜あん
 
監督 脚本 尾関玄
プロデューサー 内藤諭
撮影 栗田東治郎
録音 小牧将人
編集石川真吾
主題歌 甲本ヒロト「呼んでくれ」
衣装Ka na ta
ヘアメイク 松本智菜美
スチール 河内純子
助監督 佐藤純
制作担当 今井尚道 
 
©2015 ISHIO  93分
 
 
下北沢トリウッド
2016年8月6日(土) 〜 8/26(金)
タイムテーブル 12:30 / 14:30 / 18:30
入場料金 一般: 1600円 大学 • 専門: 1300円
シニア: 1100円 高校以下 • 障害者:1000円
前売り券 1300円
火曜定休
 
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RAKUTEN SHOWTIMEにて『蘇りの恋』無料公開!



7/1〜7/31までの期間限定で拙作『蘇りの恋』がRAKUTEN SHOWTIMEというサービスで公開されています。

 
 
RAKUTEN SHOWTIMEのメンバー登録をするだけで無料でご覧いただけます。
ぜひご覧ください。
 
『蘇りの恋』ーLove Resurrectionー
20分
監督・脚本:石川真吾
出演:泉光典 椿かおり  
撮影:PHOTOGRAPHER HAL
音楽:長尾悠市
主催:スナメリの詩プロジェクト
 
以下↓のリンクをクリックで再生!
 
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【福井登山】雨露の冠岳~浄法寺山

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『リリカルスクールの未知との遭遇』公開に寄せて

 HIPHOPアイドルユニット「リリカルスクール」の主演映画『リリカルスクール未知との遭遇』が本日公開される。

 

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 僕はDIT(デジタル・イメージング・テクニシャン)としてクレジットされているが、実際の現場では車輌部もやったしカラーグレーディングのお手伝いもしたしCG処理も応援したし、グラフィック処理も一部担当した。僕のいままでの拙い映画人生のキャリアのなかで一、二を争うエンターテインメント映画に仕上がっている。まさに「なんでもありのウルトラハッピーパーティームービー」だ。

 




リリカルスクール未知との遭遇』に寄せられたコメントを引用する。(公式サイトより)

な、な、なぜだ!?
75分間ず~~っとニヤけっぱなしでした!(シラフで!)
荒川良々(俳優) 

デモ田中「リリカルスクール未知との遭遇」。デモ田中監督のドラッギーなワールド全開ですごく楽しい作品だった!リリカルスクールファンに向けられた映画かもしれない、デモ、デモ!デモ!!デモ田中ワールドも是非体験して欲しい!最後に自然と涙が出たよ!お疲れ様でした!

西村喜廣(映画監督) 

つっこみどころ満載だけど、ラストの彼女たちの本領発揮は圧巻!

山本英夫(漫画家) 

デモ田中監督『リリカルスクール未知との遭遇』、びっくりポンな怪・・・いや傑作ドラッグムービーだった!面白い!
佐藤佐吉(映画監督)

最高にフレッシュでした。長さもちょうどいい感じですね。音も効果音もアニメーションSFXもかっちょよかったです。リリカルスクールの皆さんはもちろん、出演者の皆さん全員がなんだか爽やかに見えてくるのもワクワク素敵な青春感覚と爽快感でした。ピース、ユニティ、ラヴ、ハヴィング・ファン、アンド・宇宙のファンタジー!
COMPUMADJ / アーティスト

もしこの映画を見るまで、彼女達の存在を知らなかった方には、映画終盤に登場するライヴ・シーンをしっかりと目に焼き付けて欲しい。そこでは映画という虚構の中に、彼女達の生き様や実存が、しっかりと輝きを放っている。そして現実の彼女達のライヴにも足を運んで欲しい。“プチャヘンザ!”で歌われる通り、我々とリリスクは、「出会った時からダンスをする運命」なのだから。
高木“JET”晋一郎ライター/男の墓場プロ所属

潤沢な予算や知名度に頼らない。こうした映画こそリアルタイムで、劇場で観ることに大きな意味がある。
田野辺尚人(別冊映画秘宝編集長)

 自分がちょっとでも関わった映画に著名な方々がコメントしてくれているのは嬉しいものですね。映画の公式サイトにはもっと多彩な方々のコメントが載っていますのでご参照ください。 

映画「リリカルスクールの未知との遭遇」オフィシャルサイト「コメント」


昨年、僕がクランクアップした際に書いたエントリーがこちらである。

dptz.hatenablog.com

 「映画の宗教性」について感傷的に書いてある。「未知との遭遇」とは「聖なるもの」との遭遇である。つまり「未知」≒「神」≒「宗教」≒「音楽とドラッグと祝祭」・・・。こういったワードを並べていくと、映画『リリカルスクール未知との遭遇』になるのだ。

 「リリカルスクール」は2010年から活動しているHipHopアイドルユニットだ。デビュー時は「tengal6」という名前で活動していた地下アイドルであった(笑)僕の母校である武蔵野美術大学でPVを撮影していたり、予備校の後輩がメンバーにいたり、そもそもプロデューサーであるキムヤスヒロくんがムサビの映像学科の後輩であったので、噂は聞いていたし、仕事もちょいちょい手伝っていた仲だ。ブートロックの佐々木さんも馬車馬企画の仲間だ。センスのいいHipHop好きがアイドルとの融合を図り、シーンを引っ張っていっている。

 しかし僕は正直、HipHopについて何も知らない。日本のHipHopレジェンドM.C. Boo(日本でいちばん早くBEASTIE BOYSを広めた。a.k.a.脱線3) さんが深く制作に関わっている(HipHopスーパバイザー兼共同脚本)というのに、HipHopについてのコミュニケーションをあまり図れなかった。HipHopについて深く考えたり見聞を広めることもできなかった。BIKKE(Tokyo No1 Soulset)さんやスチャダラパーANIさんといった大物アーティストたちと現場をご一緒させていただきながらも、HipHopについては「よそ者」なのである。

 僕が好きなのは「映画」である。なので映画についてしか書けない。ここからは、「現代的なB級映画」とは如何なるものであるか?ということを書こうと思う。おそらくだが、HipHopの成立も「B級」というものに深く関わっている。HipHopは悪く言えば「盗作」の文化なのである。

 音楽への愛だけはあるが、実力も金もセンスもない貧乏人が、既存のレコードをサンプリングして独自の音楽をつくった。他人のつくった音楽に、専門的な音楽知識もなく、音階もとれないアーティストが、自己の存在をひたすら言葉にする「ラップ」というある意味「楽ちん」な歌唱法で新しい音楽をつくった。

 「A級」へのあこがれが「B級」なる音楽=HipHopを産んだのだ。もちろんいまではHipHopは世界中で莫大なセールスを上げる「A級」の音楽へと成長している。しかしその黎明期にはたしかに「B級」という辺境感が漂っていたはずなのだ。

 結論を述べる。

 B級映画のチープさを認めることこそが文化の豊かさを保証するのだ。

 つまり、文化は模倣である

 東京オリンピックのロゴ問題で「パクり騒動」などと騒いでいる方々がいた。インターネット上には、ときどき漫画のトレース疑惑を告発したり、文章の剽窃を告発する文章が定期的に上がる。

 人間がどのようにものを作ってきたかの歴史に想いを馳せる。表現はまず自然の模倣から始まる。欧州最古(≠世界最古)の絵画といわれるラスコーの洞窟画(15,000年前)は牛や馬や鹿など動物を描いていた。「そこにあるもの」を残すため絵を描いた旧石器時代クロマニヨン人は自然や動物を「模倣」した。生命の儚さを表現したのか、動物学的な面白さが古代人たちの興味を引いたのか、理由はわからない。でも、表現は15,000年の風雪を耐えた。著作権などというものがない古代の、純粋な時代の話だ。

 だが、アーティストという存在の「表現したい欲望」は、法や論理観を突き抜けて宇宙まで達する。せいぜい数百年の歴史しかない近代法など、おかまいなしだ。15,000年前から人類が築き上げてきた芸術への指向性、なにか美しいものへの探求、聖なるものへの接近・・・。「聖なるもの」がA級だとすると、自分の作るものは「B級」だ。だがそれでもいい。すこしでも「神(超越的なもの)」へ近づきたい。ヌミノーゼ(Numinöse)への志向。超越神が創りたもうた世界を模倣する喜び・・・。

 だんだん話のスケールがデカくなってきたので本題に戻す。

 『リリカルスクール未知との遭遇』は難しいこと考えずに誰でも楽しめるSF青春アイドル音楽ムービーです。博多っ子であるデモ田中監督の感性が爆発した、ラーメンで言えば「全部のせ」のエンターテイメント作です。まさに「なんでもありのウルトラハッピームービー」であります。

 低予算映画ならではの「粗」はありますが、その「粗けずりさ」が魅力でもあります。「B級」への志向は映画の経済性へのカウンターです。レンタルビデオ屋に埋もれたゴミクズのような映画のなかにお宝が眠っている感覚です。映画制作はとにかく金がかかります。SF映画ともなれば輪をかけてお金がかかります。しかし、長編映画デビュー作に潤沢な資金など集まりようもありません。しかし、お金がなくても情熱さえあれば面白いものを作れるんだ。トンチンカンでも愛情がこもっていればお客さんは楽しんでくれるはずだ。

 本日、お客さんに楽しんでもらえるかどうかの、幕が開きます。ハッピーなバイブスが宇宙へ届くことを願って。


【劇場情報】
 5/28(土)よりシネマート新宿
 6/18(土)よりシネマート心斎橋
 6/25(土)名古屋シネマスコーレ
  以降全国順次公開

パーティ好きの連中がつくってますので劇場でのイベントも目白押しです。ぜひチェックしてみてください。

 

ls-movie.com

 

 


「リリカルスクールの未知との遭遇」予告編

 


RUN and RUN / lyrical school 【MV for Smartphone】

 

 

RUN and RUN(初回限定盤)

RUN and RUN(初回限定盤)

 
RUN and RUN(通常盤)

RUN and RUN(通常盤)

 

 

人生に絶望したら『夜と霧』を読みなさい

〈わたしたちは、おそらくこれまでのどの時代の人間も知らなかった「人間」を知った。では、この人間とはなにものか。人間とは、人間とはなにかをつねに決定する存在だ。人間とは、ガス室を発明した存在だ。しかし同時に、ガス室に入っても毅然として祈りのことばを口にする存在でもあるのだ〉

ヴィクトール・E・フランクル

夜と霧 新版

夜と霧 新版


アラン・レネが監督した32分のドキュメンタリーの『夜と霧』もある。フランクルと同じくアウシュビッツ強制収容所を題材にしている。衝撃的で絶望的な気分になる傑作だ。人類がどこまで愚かで残酷なものなのか、たった32分で体験できる。戦争を始めたい政治家、愛を忘れたハードワーカー、人生に絶望して自殺を考えた人、みんなこれを観ろ。もう一度言う。観ろ。骨と皮だけになった遺体が山をなす穴に、またつぎつぎと死体が投げ込まれる……。髪で作った服、人間の脂肪で作られた石鹸。命のたいせつさが実感できるだろう。さらに衝撃的なのは「トイレ」である!こればかりは言葉にできない。あまりに汚くて。言葉にならない。映像を観てください。きっと…言葉にできない……ラーラーラー ララ〜ラーララーララーラララーラー(小田和正)

夜と霧 HDマスター [DVD]

夜と霧 HDマスター [DVD]


戦後、フランクルは「人生はどんな状況でも意味がある」と説き、生きがいを見つけられずに悩む人たちにメッセージを発し続けました。彼が残した言葉は、先が見えない不安の中に生きる今の私たちにとって、良き指針となるはずです。
収容所という絶望的な環境の中で希望を失わなかった人たちの姿から、人間の“生きる意味”とは何なのかを探ります。そして苦境に陥った時の“希望”の持ち方について考えていきます。名著14 フランクル『夜と霧』:100分 de 名著

 

フランクルの思想はいまを生きる思想であり、アドラー(嫌われる勇気)とも 通づる、普遍的な「祈り」を感じさせる思想である。「それでも人生にイエス」と言うのは金持ちのボンクラ息子でも言える軽いことばです。しかしフランクル強制収容所で妻も子供も殺され命からがら絶望のなか終戦を迎えたのです。そのうえで「それでも人生にイエス」と言うのです。人生に絶望したら『夜と霧』を読んでみてください。じつは、ユーモアたっぷりで読みやすい本です。読んでも絶望が晴れないなら精神科に行きましょう。精神科やメンタルクリニックに入る勇気や、医者への相談の仕方には僕なりの細かいテクニックがあるのでいずれ書きますね。薬もすぐ処方してくれるでしょう。しかし薬だけでなく、人間の心の支えには本も必要です。

とにかく死ぬな、生きろ、精一杯いまを生きろ。人間いつ死ぬか分からん。