FilmMaker Ishikawa Shingo

「Hairs」「Food 2.0」「スティグマ-STIGMA-」「裸で汁を出すだけの簡単なお仕事です。」「ラジオスターの奇跡」「蘇りの恋」「カササギの食卓」「出発の時間」などの映画監督、石川真吾のブログです。

不安と眠気の『Food 2.0』48時間メイキングPart7 シナリオづくり編②

<前回までのあらすじ>
指を怪我した女優にピザを食わせたら機嫌が直った

21:00

みんなでピザをつつき、コーラをがぶ飲みする。パーティだね。
成海花音さんに笑顔が戻った。やはり食べ物は偉大である

21:30

腹が膨れたんで、いよいよまとめに入る。ファシリテイトするよ。

21:40

ともあれ、主人公である。主人公を決めないと物語は動かない。映画とは主人公の旅なのである。短編であろうと長編であろうと一緒だ。主人公の旅とその「変化」に観客は感情を揺さぶられる

物語とは「行って帰る」こと

どこに「行って帰る」のかと言うと、日常から非日常へ。そして日常に帰還するのだ。

日常→非日常→日常(これを行きて帰りし物語と呼ぶ)

ホラー映画はこの物語の構造を逆手に取って、観客に恐怖を与える
ホラーは「行ったまま帰ってこない」のだ。

悪魔のいけにえ』のラスト。異常な一家の惨劇から逃げた主人公サリーは、レザーフェイスに追いかけられ、通りがかった車の荷台に乗り込み、脱出に成功する。かろうじて生き延びたサリーは狂ったように笑う……。
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中学生のときにはじめて観たこのラストには衝撃を受けた。主人公は助かった。が、狂ってしまった。

これが「行ったまま帰ってこない物語」である。

「あっち」に行っちゃったままなのだ。

ハッピーエンドじゃなきゃヤダ〜なんて抜かす軟弱な観客に強烈なビンタをかましてくれるのが「あっちに行ったまま帰ってこないホラー映画」である。

当然、後味の悪い鑑賞体験になる。

あなたの一生にへばりつく悪夢になるかもしれない。

あなたの人生を不可逆的に変えてしまうかもしれない。


河合隼雄は恐怖をこう定義している。
「人間は自分の人生観、世界観やシステムを持ちながら生きてるが、それをどこかで揺り動かすもの」

これはそのままホラー映画の定義だし、「芸術」そのものの定義だと思う。

観客を揺り動かすもの。劇場に入る前と後では世界の見え方が一変してしまうような「劇薬」

そういうものをわたしはつくりたいんですよ。

観客の日常に裂け目を入れるようなものを。

そして主人公は「変化」する。

主人公は日常→非日常→日常の旅で「変化」する

エンタメ映画では「成長」する。『ドラえもん』映画ではのび太成長が必ず描かれる。サスペンス映画では主人公の「堕落」が描かれることもある。(この変化のことをハリウッドのシナリオ用語では「キャラクター・アーク」と呼ぶ)

  • 「成長しない主人公」 ex. ウディ・アレンの映画
  • 「死んでしまう主人公」もいる(偽りの主人公)。ex.『サイコ』
  • とある共同体に洗脳されちゃって帰ってこない」主人公というのもいる。ex.アリ・アスター『ヘレディタリー』『ミッドサマー』

つまり、とにもかくにも、まずは主人公を決めないといけないのです。ホラー映画といえら、若い女の子で女子高生がなぜか「定番」である。じゃあ女子高生主人公にしよう。
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青い食べ物を食べる食品モニターの組織。じゃあ、「潜入」する物語にしよう。ヒッチコック映画の登場人物はヒッチコック映画を見たことがない」というテーゼがある。「危険そうなところに向かっていってしまう」のがホラー映画なのだ。『サイコ』も『悪魔のいけにえ』も、あんなヤバそうなところにどーして行くの? ってとこに行くのがいいんだ。『ジョーズ』の主人公の所長なんて泳げないのに海に行ってサメと対決するハメになるだ。そこにこそ映画の魔法がある

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映画史を代表する2大・行っちゃらめー!!!なところ。

じゃあ、女子高生が父親を探して組織に潜入する物語にしよう。そこでは青い食べ物が出される。入院患者が4人いて・・・。じゃあ、病院側の悪役は、『カッコーの巣の上で』のラチェッド看護婦長よろしく、体制の監視者にしよう。トランプは識別に使おう。主人公が青くなった後、「今さらなんなのよ」発動だ。

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ホワイトボード上でストーリーが作られていく(実際はこんなにサクサクいかないが)

同時にキャスティングも進められていく。キャスト・スタッフで集まってるんだからそりゃもうその場でサクサクと決めていく。この場に至るまでに面白いアイデアを発言していた俳優にはなるべくいい役が振られる。そういう意味では平等、かもしれない。女子高生を主人公にしようとした時点で成海花音さんが主役というのは確定とも言えるのだが。俳優たちにとってこのシナリオ会議は、共演者・監督とのコミュニケーションの場であり、モチベーションアップの場であり、役作りや、作品のムードや監督の世界観を把握する場なのです(そうなっていればいいな)。

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没制服。3ヶ月前まで女子高生だっただけあって実に似合う。

プロットを固めつつ、キャストも固める。はっ、父親役がいない・・・。「石川さんがやればいいんじゃないですか?」

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父親役がいない・・・

わたしが父親役ですと? 「馬鹿を言うんじゃないよ・・・」 しかし役者は足りない。時間もない。そもそもシナリオはまだ何にもできてない。

続く。


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6/25に授賞式があり、我々のチームは「主演女優賞」「観客賞」「小道具賞」をいただくことができました!!これもチームの皆のおかげです。


ストーリー/行方不明になった父を探す女子高生。ようやくたどり着いた研究所で食べさせられたのは、世界を救うおにぎり。

 

出演/成海花音  横須賀一巧  免出知之 アライジン 柳生はる奈 美南宏樹 SHINYA 児玉アメリア彩

監督/石川真吾 脚本/宮本晴樹・石川真吾  撮影監督/ 江口裕祐  撮影助手/佐藤 遊・船場 幸平  録音/飯島花衣
美術/定塚由里香  編集/石川真吾  音楽/原 夕輝  8分/ホラー  ©2021 STONE RIVER

This film was made for the 48 Hour Film Project.
www.48hourfilm.com



チーム名【STONE RIVER】
作品名『Food 2.0』

#48時間映画祭
#48HFP
#Food2・0
48hourfilm.com/tokyo/

不安と眠気の『Food 2.0』48時間メイキングPart6 シナリオづくり編①


不安と眠気の 『Food 2.0』 48時間メイキング Part1 仲間集め編 - FilmMaker Ishikawa Shingo
不安と眠気の 『Food 2.0』 48時間メイキング Part2 仲間集め編② - FilmMaker Ishikawa Shingo
不安と眠気の 『Food 2.0』 48時間メイキング Part3 仲間集め編・完 - FilmMaker Ishikawa Shingo
不安と眠気の『Food 2.0』48時間メイキングPart4 そもそも48時間映画祭とは何か? - FilmMaker Ishikawa Shingo
不安と眠気の『Food 2.0』48時間メイキングPart5 お題とジャンル発表 - FilmMaker Ishikawa Shingo

お題が発表され、われわれはスタッフキャスト合同でのシナリオ会議にはいった。このやりかたでのシナリオ開発は3度目ということもあり、作業は順調に……進まなかった。

5/29(金)

19:15

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キックオフ会場から会議室に戻る最中こんなLINEが。成海花音さんが指を怪我したので冷やすものを買ってきてくれ、と。
な、なにごと!?

19:30

会議室に入ると、成海花音ちゃんが痛がっている。怪我はまあ、、、大したことない。ほっ。冷やして患部を圧迫すればそのうち血は止まるだろう。

しかし相当痛かったようで、テンションはだだ下がりである。さっき会った時とは別人だ。

19:40

出席者は脚本・宮本、美術・定塚、成海、児玉、アライ、横須賀、免出、わたしの8人。

いい具合の人数だ。合議制でシナリオを作る際、大事な点が2つある。

①「冷める発言をするやつ」を入れないこと
②ファシリテイトが肝心

①はブレインストーミングの原則、「否定しない」と近い。「どうすんの? 時間ないよ」とか煽るだけ煽ってアイデアは言わない人間は、こういうやり方に向いてないのでお呼びしてはいけない。

そもそも前回は参加者が14人もいたので収集がつかなかった。今回の8人っていうのはとてもよい人数だと思う(ブレインストーミングは10人以下が望ましいとされている)。

②ファシリテイト
ファシリテーターとは、発言を促し、意見を整理、集約してゴールに導く進行役、だそうだ。そう、つまり、まとめ役がしっかりまとめないと、会議はただの雑談と化す。それはそれで楽しいのだが、我々はあと8時間くらいでシナリオをあげないといけないのだ。

19:45

俳優部の自己紹介も兼ねて「やってみたい役」を聞いていった。「う〜ん、何でしょうね〜」みたいな回答が多かった。

そう、この質問は、役者としてのスタンスが鮮烈に出る。「与えられた役を一生懸命やるだけです」みたいなスタンスの人もいらっしゃる。ゆえに、人によってはあまり盛り上がらなかったりする質問だ。初参加のひとだらけ(そもそも初対面のひともいた)なので、自分をそこまで出さず、「このクサレ監督はおれをどう料理してくれるんだァ!?」みたいな目でわたしを見てくる。料理人と食材の真剣勝負である。表面的にはにこやかであったが、心の中では巌流島であった。

20:00

ひととおり自己紹介タイムが終わり、なんとなく人柄や、やってきた役柄、やらせたら面白い役柄などが見えてきた。脚本家が俳優と会って会話しておけるこのシステムのいいところは、「当て書き」が比較的容易であることだ。

次のステップとして、「お題」をホワイトボードに書き出していった。

ジャンル:ホラー・食べ物
キャラクター:八木丘真二郎・聡子
職業/属性:治験モニター
小道具:トランプ
台詞:「今さらなんだよ。」

治験と激変した世界

まず、治験に参加したことがある人間がうちのチームではわたしだけだった。一般的には人体実験と治験の違いや、二重盲検法を知らなくて当然だ。しかし、コロナで世界は一変した。治験、ワクチン、偽薬なんて言葉がニュースに踊る。「濃厚接触」なんて言葉は、コロナ以前はアダルトビデオのキャッチコピーでしか見なかった。

世界はたったひとつのウイルスで激変した。対応できる政治と対応できない政治で明暗が分かれた。そして常にその変化に取り残される個人がいる。映画というものは「世界から孤立していくその個人」に常に寄り添うべきだと思っている(前作『スティグマ』はこのような意識で作られております。ぜひご覧を)。

www.youtube.com


治験の間違ったイメージ

今回のお題を聞いて、治験の間違ったイメージを描く作品はいっぱい出てくるだろうなあ、と思った。ロボトミーとかやっていた時代の精神科病棟とか、差別的な閉鎖病棟のイメージ。そういうのをゴッチャにした、時代錯誤な作品。こういう医療系は、きちんと取材しないとたいへん残念なものが出来上がる可能性が高い(大手の商業映画作でもこういった"間違った"描写は幅を利かせている。気に食わない)。ま、48hfpで取材しろ、ってのはあまりに無茶な話だ。せいぜいネットでちょろっと調べるくらいが関の山だろう。

ただ、「治験会場をそのまま使う」というベタな選択だけはやめよう。そう皆と共有した。

小道具、トランプ

これは使いやすそうだが、被りがありそうなアイテムだった。治験会場でトランプで賭けをする、みたいなストーリーはいくらでもありそうだ。

とくに危険だと思うのは「ジョーカー」だ。なんらかの黒幕、トリックスター、転換、逆転に使われるだろう。そこまでステレオタイプなもので被ってしまったら恥ずかしい。

とにかくチームには「裏をかきたい」と伝えた。

台詞「今さらなんだよ。」

この台詞は1幕目で使わないほうがいい。セットアップの情報量の中に埋もれてしまうからだ。ギャグのフリにしてしまうと、さらに埋もれる。2幕目のミッドポイントに使うのはアリだろう。3幕目、できればクライマックスで使うとより効果的になる。そしてそのセリフが発する意味が複数あるほうが味わい深い。楽なのはラストの台詞にすること。否が応でも台詞が立つ。しかし、ラストにしてしまうのは被りが多そう。

20:01

以上の長ったらしい説を1分で皆に説明し、とにかくいろんなアイデアをくれ、と募った。

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20:05

イデア出し。

20:10

食べ物ホラーということで思い出したのが『ソイレント・グリーン』。あれはSFだが、後半のソイレント工場の描写はホラーそのものだ。
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ソイレント・グリーンの原材料は……

未見の方には申し訳ないが思いっきりネタバレすると、未来の食糧不足のアメリカで、人々が一律に食べている「ソイレント・グリーン」というスティック状の食べ物の謎をチャールトン・ヘストンが追う話だ。その正体は人肉でした……!というのがオチである。「ソイレント・グリーン」の見てくれがグロい。アルミの板のような、じつにまずそうなシロモノなのだ。そして「完全栄養食」なんだそうだ。

「完全栄養食」なる食べ物は、いまけっこう市販されている。BASEとかHuelとかCOMPとか、「ソイレント」なる名前を冠した完全栄養食もあるのだそうだ。あまり食べたくはない。
[(ソイレント) Soylent] [ソイエントの食事代替粉末、カカオ、2.3ポンド] (並行輸入品)

メシマズ・ディストピアSF『スノーピアサー』

似たようなディストピアSFにポン・ジュノの『スノーピアサー』がある。列車の中以外の人類が死滅した、凍った地球が舞台で、列車のなかの「下層民」が食べさせられているじつにまずそうな食い物「プロテイン・ブロック」。これの原料が……列車内のゴキブリやコオロギなのである。オエッ。書いてて気持ち悪くなってきた。ひっでえことに、「上級階級」はステーキとか食ってやがるんだ!
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そして、「食べ物ホラー」で思いつく意外なタイトルが『2001年宇宙の旅』である。意外にもあの映画、「食べる」描写がいっぱいあって、しかもそのすべてがまずそうなのだ!
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これについて押井守さんがパンフに原稿を書いていて、けっこう影響を受けた。アニメキャラクターに、実在感を持たせるために意図的にものをよく食べさせるんだそうだ。
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まずそうなものをまずそうに食ってる描写はそれだけで怖い。これは、今回の作品の核になりそうだった。

逆に、「うまそうに食っているけど怖い」というのもある。『悪魔のいけにえ』とか、『ソドムの市』とか。
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食べ物ホラーで究極なのは『ゾンビ』ものだろう。なんせ人間を「未調理で」食ってるのだ。
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問答無用に怖い。

火通さないとお腹壊すよ、なんて声をかける暇もないくらい怖い。

ロメロのゾンビ三部作『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』『ゾンビ』『死霊のえじき』では、ゾンビがなぜ人間を食うかは謎であった
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わたしが偏愛する『バタリアン』ではその理由が明かされる。「死んでいる状態」は「痛い」のだそうだ。ゾンビ状態は痛くて痛くてたまらないのだが、「人間の脳を食う」と「痛みが和らぐ」ので「人間を食う」のだそうだ。この革新的な設定のおかげで、愛するがゆえに食べたくなるという後半の陰惨な展開に理論的な説得力が伴う。
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バタリアン』の監督・シナリオライターダン・オバノンが書いた『エイリアン』は、閉鎖空間で食べられる恐怖に覆われた傑作であった。エイリアンは純粋で完璧な生き物だ。同情も恐怖心もない。ただ捕食するだけ。人類はエイリアンのエサなのだ。まさに「宇宙ではあなたの悲鳴は誰にも聞こえない」のだ。
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「食べ物ホラー」というだけで様々なB級映画史が頭を駆け巡る。食べることは生物の根本的なところにあるからか、恐怖の対象にもなりやすい。

では、食べること自体が恐怖の対象になりそうなもので、かつ手間の少ないものはなにか。

美術の定塚さんが「青い食べ物ってまずそうですよね」などとアイデアをくれた。
成海花音「いまのJKに流行ってるんですよ青いの」「美味しいですよ」

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ロイヤルブルーというらしい

さっそくググってみると、青い。不味そう。こんなものを喜んで食べるいまどきのJKはもはやわたしとは別種の人間なのかもしれない。この世代間ギャップ、人種ギャップも重要なヒントになった。

いいアイデアが出てきた、気がする。しかし、まだストーリーとして練り込むにはまだまだだ。練って、トッピングしなければならない。とりあえず、みんなのご機嫌を取るために宅配ピザを注文した。もちろん、コーラも付けた。


続く。


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ストーリー/行方不明になった父を探す女子高生。ようやくたどり着いた研究所で食べさせられたのは、世界を救うおにぎり。

 

出演/成海花音  横須賀一巧  免出知之 アライジン 柳生はる奈 美南宏樹 SHINYA 児玉アメリア彩

監督/石川真吾 脚本/宮本晴樹・石川真吾  撮影監督/ 江口裕祐  撮影助手/佐藤 遊・船場 幸平  録音/飯島花衣
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不安と眠気の 『Food 2.0』 48時間メイキング Part1 仲間集め編 - FilmMaker Ishikawa Shingo
不安と眠気の 『Food 2.0』 48時間メイキング Part2 仲間集め編② - FilmMaker Ishikawa Shingo
不安と眠気の 『Food 2.0』 48時間メイキング Part3 仲間集め編・完 - FilmMaker Ishikawa Shingo
不安と眠気の『Food 2.0』48時間メイキングPart4 そもそも48時間映画祭とは何か? - FilmMaker Ishikawa Shingo
不安と眠気の『Food 2.0』48時間メイキングPart5 お題とジャンル発表 - FilmMaker Ishikawa Shingo

不安と眠気の『Food 2.0』48時間メイキングPart5 お題とジャンル発表


前回までの記事です
不安と眠気の 『Food 2.0』 48時間メイキング Part1 仲間集め編 - FilmMaker Ishikawa Shingo
不安と眠気の 『Food 2.0』 48時間メイキング Part2 仲間集め編② - FilmMaker Ishikawa Shingo
不安と眠気の 『Food 2.0』 48時間メイキング Part3 仲間集め編・完 - FilmMaker Ishikawa Shingo
不安と眠気の『Food 2.0』48時間メイキングPart4 そもそも48時間映画祭とは何か? - FilmMaker Ishikawa Shingo



いよいよ48時間での映画づくりがはじまる。ここから書くことはすべて事実である。

5/28(金)

14:00

起きる。どうせ寝れないことになるだろうとは思っていたので、たっぷり、寝た。

14:15

最強のスタッフ・キャストが集まったが、わたしがやりきれるかどうか分からない。不安だ。布団で震える。

14:40

家の写真を撮ってグループLINEに送る。ロケハン写真だ。うちが舞台になるかもしれないからね。(毎回使ってるな……。)
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15:00

シャワーに入る。次、シャワーに入れるのはいつになるのだろう。

16:10

脚本の宮本晴樹さんとふたりきりで会う。
48の対策会という名目だが、雑談で終わる。

17:00

予約していた会議室に行く。気をきかせて全員分の飲み物を買って行ったら遅刻する。

17:10

会議室に集まってもらったのは、美術・定塚由里香、免出知之 、アライジン、児玉アメリア彩、宮本晴樹、横須賀一巧、成海花音(敬称略)。こ、濃ゆいメンツだ……。免出、アライは初対面。いいやつだった。

17:20

わがチームStone Riverが48時間映画祭をやる社会的意義を蕩々と語ろうと思ったが、雑談で終わる。

17:45

わたし1人だけが抜けて麹町の東京ビジュアルアーツへ。18時からキックオフイベントがはじまるのだ。

17:50

会場前にいたのは「境界カメラ」チームの、井川耕太郎監督とポリスくん!ポリスくんは前回の『裸汁』でわれわれのスタッフだった男だ。背信行為許すまじ。脳天を叩き割った。井川監督は先輩だが、こんな強力なライバルを野放しにしておいていいわけがない。映画監督の命である喉を切り裂き、ついでにマウスも握れないように右手の腱を切っておいた。よし。

17:55

緊張していたので、自動販売機でコーラとポテトチップスを買った。ストレスには糖質だね!

18:00

キックオフ会場に入る。なんか……暗い。会話がない。そもそも人数が少ない。運営スタッフは知った人が何人かいるが、参加チーム側に知った人がいない。大丈夫か、今年。

18:05

今年は新型コロナウイルス対策のせいでキックオフイベントは代表者1名のみ入室だ。そのせいで、盛り上がりに欠けるのだろう。前回(2019)まで、わたしもよそのチームも、仲間を10人くらい引き連れて、ゲハゲハ笑いながら、なんなら酒を飲みながらゴキゲンにパーティのスタートを楽しんでいたものだ。人が多いとそれだけアサシンの仕事もやりやすく、知った役者やフィルムメーカーを血祭りにあげていたものだが、今年はやりづらい。ちっ。

18:10

いちばん奥の席に座る。隣に座ってきたイケメンの優男が声をかけてきた。お、お、お、お前は鴻森くんじゃないか!2018年の48時間映画祭でわれわれのチームの助監督をやってくれた男だ。またしても裏切り者が!憎っくきCNSSじゃなくcnssという名前でエントリーしたようだ。「正々堂々と作品で勝負しましょう」とかなんとか言ってきたので、毒針を刺しておいた。キックオフイベントがちょうど終わる頃に効いてくるはずだ。くたばれ!

18:15

キックオフイベントはじまる。森プロデューサーの挨拶。今年のエントリーはわずか29チーム。前回は49チームだった。エントリーが少ないということはチャンスなんだよ!と鼓舞された。
このキックオフイベントはシナリオ会議しているチームも配信映像で見ているはず。未来だねえ。

18:20

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ジャンルくじ、始まる。
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cnssチームは「スーパーヒーロー」と「ミュージカル」を引いた。うへへ、ざまあみろ。ハズレだ。鴻森君はミュージカルを「待ってました」とか強がりを言ってた。失敗することを祈る

18:30

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うちのチームのジャンルくじを引く。「何が出ても出たとこ勝負」とか余裕ブッこいていたが心の中では楽なジャンルこい、と祈っていた。

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「ホラー」!!

「食べ物」!!

実はこの時、「あ、いける」と思っていた。なぜならホラー×食べ物っていうのは2作作ったことがあるからだ。鉄クズを食べる女子高生を描いた『カササギの食卓』と、相手の嫌いな物を食べるビデオテープを送る女を描いた『般若のフレーム』という映画だ。もし興味あればご覧ください。
【精神異常ドラマ】カササギの食卓【異食症】 - YouTube
【短編ホラー映画】般若のフレーム - YouTube



成功しているかはともかく、「挑戦したことのあったジャンル」というのはかなり安心材料だ。それに、最近はあまり追っかけていなかったが、ホラー映画は大好物だ


18:40

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「境界カメラ」チームのリーダー、有馬顕氏のくじ引きだ。有馬さんはわたしのもうひとりの映画の師匠だ。といっても、いまは映画監督は事実上引退して、社長兼プロデューサーとして、飲食店や映像制作、配信を通してパーティを仕掛けている。

どんなクソみたいな人生でも、「その人に出会わなければ今の自分はない」と思える人は必ずいる。わたしにとってはそれは間違いなく有馬さんだ。映画作りだけでなく、人との付き合い方、酒の飲み方、パーティのやり方、中島らもさん、レゲエ音楽、人生観、友だちとの別れ方、世界は美しいんだぜ、って照れずに言うこと。ありとあらゆることを学んだ。

かつ、いっぱい仕事をくれる。

しかし今年に入って、まったく仕事を依頼してくれない。こちらはいつだって仕事を待っているのだ。その上、48時間映画祭ではライバルとして立ちはだかった。畜生。親を殺すような気分で有馬さんの目を潰しておいた。今までありがとうございました。

前回、このコンペでは失敗しにきた、と書いたが、スマン、ありゃウソだった。
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やるからには勝つ。


「境界カメラ」チームのくじ引きは「アクション/アドベンチャー」か「リベンジ」だ。作ったことないらしい。良し良し。
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「境界カメラ」はニコニコ動画で毎週金曜日に配信している番組で、株式会社エル・エーまわりのクリエイターやオカルト系のくせのある人たちが集っている。時々ショートムービーを作ったりもしていて、題材は当然、ホラーだ。
ch.nicovideo.jp

今回、彼らが得意とするところのホラーをわたしのチームがもらうことになった。こ、これは……負けられねえ

18:45

お題発表。
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職業「治験モニター」ですって。あれはボランティアであり、お金はもらえるけど、謝礼であって報酬ではない。だから治験モニターというのは職業ではないのだが。まあ、職業/属性だから。

職業/属性にストーリーが引っ張られることは多い。が、今回は強烈だと思った。2018年は「ラジオパーソナリティ」、2019年は「派遣社員」だった。「治験モニター」が要請するストーリーはすぐ見えた。どう裏をかくかだと思った。

わたしは治験についてはちょっと詳しい。というか一時期、結構な頻度でやっていた。詳しさが有利になることも、足を引っ張ることもあるなと思った。フィクションに飛躍させるのに事実に縛られる可能性もある。前回、「汁男優の派遣会社」なんてのは誰もやったことがないからこそバカバカしい発想が生まれた。

19:00

48時間がスタート。一瞬のように長く、永遠のように短い2days。この時はこんなに眠れないとは思いもしなかった……


続く。



前回までの記事です
不安と眠気の 『Food 2.0』 48時間メイキング Part1 仲間集め編 - FilmMaker Ishikawa Shingo
不安と眠気の 『Food 2.0』 48時間メイキング Part2 仲間集め編② - FilmMaker Ishikawa Shingo
不安と眠気の 『Food 2.0』 48時間メイキング Part3 仲間集め編・完 - FilmMaker Ishikawa Shingo
不安と眠気の『Food 2.0』48時間メイキングPart4 そもそも48時間映画祭とは何か? - FilmMaker Ishikawa Shingo


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ストーリー/行方不明になった父を探す女子高生。ようやくたどり着いた研究所で食べさせられたのは、世界を救うおにぎり。

 

出演/成海花音  横須賀一巧  免出知之 アライジン 柳生はる奈 美南宏樹 SHINYA 児玉アメリア彩

監督/石川真吾 脚本/宮本晴樹・石川真吾  撮影監督/ 江口裕祐  撮影助手/佐藤 遊・船場 幸平  録音/飯島花衣
美術/定塚由里香  編集/石川真吾  音楽/原 夕輝  8分/ホラー  ©2021 STONE RIVER

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作品名『Food 2.0』

#48時間映画祭
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不安と眠気の『Food 2.0』48時間メイキングPart4 そもそも48時間映画祭とは何か?

 

 

6月12日なかのZEROでの上映は盛況のうちに無事終了しました。ご来場いただいた皆様、ありがとうございました。このメイキング記事は本来、この上映のための「宣伝」だったのですが、わたしの筆が遅く、上映に間に合いませんでした。次世代の48時間映画祭フィルムメイカーのため、わたしのしんどさを分かってもらうため、引き続き書いていきます。だって、だって、ツラかったんだよぉ……。

<span style="font-size: 70%">
前回までの記事。

不安と眠気の 『Food 2.0』 48時間メイキング Part1 仲間集め編 - FilmMaker Ishikawa Shingo
不安と眠気の 『Food 2.0』 48時間メイキング Part2 仲間集め編② - FilmMaker Ishikawa Shingo
不安と眠気の 『Food 2.0』 48時間メイキング Part3 仲間集め編・完 - FilmMaker Ishikawa Shingo
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スタッフキャストのLINEグループを作る。

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クルーにルールをあたらめて説明した。

 

B. 全ての創作作業は『公式な48時間』の中で行なわれなければなりません。コンペティション開催期間以外のどのような事前の創作作業も禁止します。創作作業は下記の項目に限ったものではありません。

  • シナリオ作成
  • リハーサル
  • 衣装、セットデザイン
  • 撮影
  • 編集
  • サウンドデザイン
  • レンダリング
  • テープや他のメディアへの書き出し

 

C. 『公式な48時間』に先立って行える作業は、

  • クルーを集める
  • 役者を集める
  • 機材の確保
  • ロケーションの視察、確保


F. 各参加チームには映画の中で扱われるお題として、ジャンル、キャラクター、小道具、台詞が割り当てられます。

お題のキャラクターは必ず、それがお題のキャラクターであると判別できる表現のもとで、画面に登場する必要があります。ただし、お題のキャラクターの名前を誰かが言ったり、文字を用いて名前を画面上で紹介する必要はありません。
お題の小道具は必ず画面に登場しなくてはなりません。お題の小道具の"画像"は許可されます。
お題の台詞は一語一句完全に使用されなければなりません。使用法は台詞として、歌の歌詞として、又は文書でもかまいません。

 

G. 全てのキャストとクルーはボランティアでなければなりません。

 

ⅲ. 各映画のエンドクレジットは最大60秒までです。その60秒はルールKにあるように、映画本編に追加されることになります。つまり、本編7分、60秒のクレジットが追加され、映画全体の長さは最長8分になります。

 

審査基準:
芸術的評価(ストーリー、創造性、娯楽性、など)(45%)
技術的評価(30%)
お題の遵守(25%)

48hfp.fffproduction.com

 

そしてここが重要。「ジャンル」。

Genre Group #1: 2021

  • アクション/アドベンチャー
  • コメディ
  • ダーク・コメディ
  • ドラマ
  • ファンタジー
  • フィルム・ノアール
  • フィルム・デ・ファム(下記参照)
  • 勝手が違う/居心地の悪い/場違いな(下記参照)
  • ホラー
  • モキュメンタリー
  • ロマンス
  • SF
  • スーパーヒーロー
  • スリラー/サスペンス
  • ウェスタ

Genre Group #2: 2021

  • バディ・フィルム
  • 成長物語
  • 食べ物
  • 休日/祭日
  • 多世代もの
  • ミュージカル
  • ミステリー
  • 時代物
  • リベンジ
  • ロードムービー
  • 学校もの (下記参照)
  • ソープオペラ/テレビ小説
  • 社会的主張 (下記参照)
  • スポーツ
  • タイムトラベル 

 

ジャンルは#1と#2の2つのくじを引き、どちらかを選ぶ。(両方も可)

地雷みたいなジャンルは ウエスタン、スーパーヒーロー、時代物、スポーツ、ミュージカルあたり。超やべえ・・・

 

 

わたしは

2018年 は  ミステリー   アクション/アドベンチャー
2019年は    喜劇    ダーク・コメディ

 

だった。比較的くじ運が良かったと言えるだろう。自主映画体制でも作れそうなジャンルだし、ミステリーもコメディも制作したことがあったからだ。

時代物とかウエスタンを引いたチームは、過去作を振り返ってみるに、正攻法でカツラや刀、テンガロンハットと銃を用意してやるチームも、大喜利的にひねってくるチームもいた。が、結果としてどちらもあまり面白いものではなかった気がする。

身も蓋もない言い方をするが、48時間映画祭で上映される作品の8割はクズである。8割はまったく面白くない。もしくは技術レベルが低くて見るのが苦痛である。

そもそも、48時間以内にショートムービーを完成させてしまうということのハードルが異常に高い。わたしも最初に聞いたときは狂気の沙汰だと思った。

その上、この"お題"(ジャンル、キャラクター、小道具、台詞)をこなさなければならない。

そして更に”面白くなければならない”のだ。こりゃ無理ゲーだよ……。

 

わたしの48時間映画祭の捉え方

商業映画監督になるためのステップ、実験室だと思っている。

商業映画監督に求められることは多い。ジャンルや原作のオーダーから始まり、芸能事務所や製作委員会のパワーバランスをかいくぐり、スタッフをひとつにまとめ、俳優部のご機嫌を取り、予算を守り、納期を守り、面白いものを作り、移り気な観客の空気を読んで、ヒットさせなければいけない。

商業映画監督はとんでもなくたいへんなお仕事だ。ストレスでハゲるか太るか痔になるか痛風になるのもやむなしだと思う(事実そういう先輩は多い)。ヒットしても次の仕事があるかは分からない。疲弊している先輩監督や、撮れなくなった/撮らなくなった先輩監督たちの姿を見るとほんとうにさびしい。

ボロボロの先輩たちの背中を見るにつけ、わたしは「自分の作品を作りたかった」のであって「商業映画監督」でありたかったわけではないんだよな……。一生自主でもいっか、などと思ってしまうこともある。まことに修羅の道である。

とはいえ、自主制作でやることの限界も常に感じてはいる。より多くの観客に観てもらって、かつ、生活していくには、「多彩なオーダーに応えられる商業映画監督」であることがマストであろう。

つまり、48時間映画祭のお題や時間制限って、そこまでキツくないんじゃないか。などと思うわけだ。世の監督さんたちはもっともっとストレスフルな中で闘っている。

 

くじ引きで決まる「ジャンル」。これはプロデューサーからの依頼だと思えばよろしい。

「キャラクター、小道具、台詞」、これは「原作」や「原案」だと思えばよろしい。

制限の中で創造性を発揮する。これ、意外と映画の本質的なところを突いている気がする。なんらかの「枠」があったほうが作りやすいのだ。そして、なんらかの「枠」があったほうが観客が見やすい。その「枠」がジャンルである。

ジャンル映画論

師匠の榎本憲男さんには「ハリウッド大手の映画会社が、大衆の好みに合わせて、型にはまった映画を作った。この型がジャンルである」と教わった。つまり、観客の欲望に応えて細分化されていった、安定したビジネスを約束する「物語の形」だ。

映画ジャンルの最初の基本形 (「アナトミー・オブ・ザ・ムービーズ」より)
・西部劇  the Western film
・恋愛映画 the Romance film
・喜劇映画 the Comedy film
・ミュージカル the Musical film
SF映画 the Science Fiction film
・冒険活劇 the Action Adventure film
・ホラー映画 the Horror film

ここからサブジャンルが発展し、混じり合って細分化されていく。

日本映画は、50%がアクション映画、残り50%が恋愛映画とドラマであった。
ドラマはどのジャンルにも属していない、ノンジャンルのヒューマンドラマだ。

映画の世界は、当てた人に「似たようなもの」を依頼するという傾向がある。一度ホラー映画でハネるとずっとホラー映画の依頼が来る。恋愛映画で当てると恋愛映画の依頼ばかり。青空映画で当てると青空映画の依頼ばかり。アクション映画で当てるとアクション映画の依頼ばかり。。。

このような状態は映画職人としては好ましい状況なのかもしれない。しかしわたしは同じものをずっとやることができない。ジャンル映画は職人の世界だ。わたしは職人というよりはアーティストだ(言ってしまった……恥ずかしい)。気分にムラがあり、言うこと、やることがコロコロ変わるわたしのような人間に職人ジャンル監督は難しい。

そもそも、自分にどんなジャンルが向いていて、どんなジャンルを撮れるひとなのか、分からない。というわけで、ランダムにジャンルを押し付けられる48時間映画祭はいい練習になるのじゃないかと思っている。

助監督修行が監督になるコース?

日本映画において、助監督をやることが「監督になるコース」だという。これはもうかなり破綻している。60歳オーバーになっても助監督をやってらっしゃる方も数名知っている。というか、助監督をやる方が「食える」のである。

自主映画をつくって、賞でも取って、それなりの観客をつかんでいる若い監督に低予算で撮らせたほうが効率的だ、とそう判断するプロデューサーがいる。そのかわり、その若い自主映画あがりの監督は、ずっと、「同じジャンル」を撮らされる。適切な例かわからないけど、清水崇さんはホラーの仕事ばかり来るそうだが、本当はメロドラマをやりたいんだそうだ。しかし、ホラーの発注があれば、腕のある人だから、怖いホラーをつくってくれる。だから仕事が絶えない。

今泉力哉さんのように、「撮りたいのも撮れるのも恋愛映画」っていう奇跡的な方は例外だ。あの人は幸福なんじゃないだろうか。Twitter見てるとたいへんなように見えるが、贅沢な悩みだ。嫁も子供もいるし。羨ましい。

ゴリゴリの助監督業をやっている方は本当に尊敬する。わたしも助監督の仕事をたまにやるが、連打では受けないようにしているし、本当に面白い企画・シナリオでない限りなるべくやらないようにしている。本っ当に疲弊するからだ。

演出部というのは「根性」を見られているのだ。

演出部というのは、監督からも、プロデューサーからも、俳優部からも、制作部からも、メイク部からも、衣装部からも、美術部からも、照明部からも、撮影部からも、怒鳴られ、文句を言われ、期待してるよとかなんとか甘い言葉をかけつつパンクしそうな仕事量を押し付けられ、根性を試されて、下積みをしながら成り上がっていく。しかしそれは幻想だ。上の世代の映画監督たちは引退しないし、企画はなかなか成立しないし、そもそも映画監督という職業が供給過多だ。

演出部は「監督になれるぜ〜」というニンジンをぶら下げられて馬車馬のように働かせられる奴隷のようなものだ。

演出部に「おもしろい映画を撮る才能」なんて試されてないし、求められない。現場の中心として、各部をまとめ、進行していくのが仕事だ。そして、めっちゃくちゃ忙しい。映画・ドラマ業界の人手不足はたいへん深刻であるが、演出部のなり手は少ない。次から次へと仕事がある。体育会系な雰囲気が残る業種なので先輩からの次の仕事の誘いは断れない。

だから、監督になる上で必須の、シナリオや編集やジャンル映画の作り方を学ぶ時間がない。

たとえ学ぶ時間を確保したとしても実践できない

映画において、理論を学んでも、いい映画をつくれるという保証はどこにもない。実践あるのみだと思う。今の商業映画の監督は失敗できない。1作1作、確実に当てていく必要がある。

 

(いちおう補足すると、わたしは監督になりたいが才能がない人は助監督をやるべきだと思っている)

 

わたしは48時間映画祭に「失敗しに」来ている。

だから「出たとこ勝負」でいいやと思っている。

敬慕している黒沢清監督は「映画作りはすべて準備で決まる」と言っていて、完全に同意する。商業映画作りは「出たとこ勝負」ではいけないのだ。

だから自主映画で「出たとこ勝負」をしていっぱい負けて学んでおく

「出たとこ勝負」で「失敗したのか、成功したのか?」。自主映画と商業映画の両方の領域で活動する中途半端なわたし、まだ何者でもないクズのわたしの今回のチャレンジです。

すっごい文字数書いた気がするけど、まだ48時間映画祭が始まってもいない。

このエントリー、まだ続く。

 

 

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ストーリー/行方不明になった父を探す女子高生。ようやくたどり着いた研究所で食べさせられたのは、世界を救うおにぎり。

 

出演/成海花音  横須賀一巧  免出知之 アライジン 柳生はる奈 美南宏樹 SHINYA 児玉アメリア彩

監督/石川真吾 脚本/宮本晴樹・石川真吾  撮影監督/ 江口裕祐  撮影助手/佐藤 遊・船場 幸平  録音/飯島花衣
美術/定塚由里香  編集/石川真吾  音楽/原 夕輝  8分/ホラー  ©2021 STONE RIVER

This film was made for the 48 Hour Film Project.
www.48hourfilm.com



チーム名【STONE RIVER】
作品名『Food 2.0』

#48時間映画祭
#48HFP
#Food2・0
48hourfilm.com/tokyo/

 

不安と眠気の 『Food 2.0』 48時間メイキング Part3 仲間集め編・完

前回はこちらで

不安と眠気の 『Food 2.0』 48時間メイキング Part1 仲間集め編 - FilmMaker Ishikawa Shingo
不安と眠気の 『Food 2.0』 48時間メイキング Part2 仲間集め編② - FilmMaker Ishikawa Shingo
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もっとも不安のタネが、シナリオであった。


脚本・宮本晴樹

宮本さんに4月の段階で声はかけていたのだが、返事が保留になっていて、正式に参加が決まったのは48時間映画祭が始まる数日前だった。自分ひとりでシナリオを書かずに済んで心底ホッとした。

宮本さんは、前回俳優として参加してくれた。
宮本さんは、歌を歌い、芝居をし、小説を書くプログラマーだ。ハイパーにアクティブな人間だ。
そして宮本さんは複数の生きづらさをかかえた人だ。

虐待、ADHD、性別違和、親との不和、派遣SEの構造的問題。余計なお世話だろうが「日本社会の残酷」を全部煮詰めたような人生を送ってらっしゃる。ような気がしてしまう。のに会うと明るく元気だからこっちも救われる。ぜひ、将来、オードリー・タンみたいな人になっていってほしい。

宮本さんが書くものは<百合>や<BL>だ。わたしが興味のあるジャンルではない。しかし、よくよく読むと「回復」の物語ばかりである。宮本さんは「過去の過ちや傷についての癒し」が自分のテーマだと仰っていた。わたしが求める「復活」の物語とも親和性がある。

そして師匠が共通なので共通言語が多くて話が早い。

宮本さんは、自分の中にあるマグマのようななにかを表現しないと死んでしまう。そんな人だと思う。だから宮本さんはツイ廃だ。複数のアカウントで、いつ寝てるの? いつ仕事してるの? な頻度で書き込みがある。いま転職活動中で暇があるらしく、そのエネルギーをちょっとだけ石川組に向けてもらおうと、誘った。

そして、宮本さんといると無条件に楽しいのだ。互いにオタク気質だからか、話題が豊富で、1振ると10返ってくる。とんでもなく頭の回転が速い。一緒にいるとこっちまで頭が良くなったような気がしてくるのだ(気のせいだけどね)。

そもそもシナリオを書く作業はしんどい。孤独だ。

シナリオは毎年毎年、不安なのだ。映画制作でいちばん重要なシナリオを、寝ずに10時間そこらで書きあげなければいけない。お題に答える大喜利力。ジャンルを成立させるための教養。エンターテインメントとしてまとめる構成力。映画としての骨格を整えつつ、7分という短尺で成立するシーンの構成。

根気、集中力、体力。

わたしはそのすべてを持ってない。

だから他人に頼る。

0を1にするのはたいっへんなエネルギーがいるのだ。

1を1.1にするのは比較的楽ちんなのだ。書いてもらったものを利用して自分の色に染めちゃう。なので、わたしはシナリオを直す。直しまくる。跡形もないくらい直す。ごめんね。でもあなたが書いてくれたシナリオが下書きになってくれたおかげで自由に飛躍できたんだよっ。

 

免出知之

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ハイスピード&ハイテンション劇団「こちらスーパーうさぎ帝国」の名バイプレイヤーである。定塚さんが連れてきてくださった。前々から彼のファンだったのでとても嬉しい。とにかく顔がいい。どう使っても味が出そう。本人は至って真面目な人間だと思っているようだが、はたから見たら狂気の人である。そのギャップがいい。しかし、ヘタな使い方をすると劇団の演出家・白柳さんから嫌味を言われそうで不安だ。


ライジン

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今回はじめて会いました。横須賀さん紹介で来てもらった俳優さんだが、作り手でもあって、48時間映画祭にすごく興味があったそうだ。榎本桜・牛丸亮、この2人とも関係が深いようだ。榎本桜氏・牛丸氏は公私ともにお世話になりっぱなしで、仲良くさせてもらってはいるが、それは今だけである。業界からいずれは抹殺しなければならないと強く思っている。あのクソ2人の息のかかった奴なら最大限警戒しないといかんな〜と思って接していたが、アライさん、めちゃめちゃいいやつだった。クソなのはわたしだ。ああ、不安だ。

 

作曲家・原夕輝

もはや大御所の域もある原さんだけど、今回も立候補して参加してくれた。ええんかな〜。ノーギャラですぜ? 20年近い作曲家としてのキャリアがある原さんだが、賞を一度も取ったことがないんだそうだ。わたしがてきとうに作った『ラジオスターの奇跡』の曲で音楽賞を取ったことを妬んでおり、会うたびにいびられる。関西人は怖いぜ。不安だ。とにかく今年は原さんに作曲賞を取ってもらいたい!!

 

録音・飯島花衣


ムサビの後輩である。大学をこの3月に卒業したばかり。フリーランスの録音部としてやっていきたいのだそうである。えらい。江口から録音部は探しておいてね〜、と言われたんで一番後輩を誘った。昨年10月に『自宅警備員フェアリーテイル』という作品で8日間、函館で一緒に過ごした仲である。じつは特に仲良くはない。しかし、信頼している。ムサビの連中というのは総じておしゃべりで口だけのバカが多いのだが(代表格がわたしだ)、彼女は真面目に淡々と業務をこなす。わたしのつまらないギャグをスルーする力も高い。えらい。しかし、録音技師経験があるのかはよく分からない。聞くのも怖い。不安じゃ〜。

 

柳生はる奈

前回に引き続き立候補してくださった。彼女は星野源の大ファンで、ガッキー・星野源結婚ショックで死んでいる可能性がある。不安だ。

 

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クセが強い人たちが集まってくれた!


強力なチームが集まってくれた。しかし人が増えると楽しみも増えるが不安も積み重なっていく。そうしてキックオフを迎えた。 つづく。

 

 


www.youtube.com

 

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ストーリー/行方不明になった父を探す女子高生。ようやくたどり着いた研究所で食べさせられたのは、世界を救うおにぎり。

 

出演/成海花音  横須賀一巧  免出知之 アライジン 柳生はる奈 美南宏樹 SHINYA 児玉アメリア彩

監督/石川真吾 脚本/宮本晴樹・石川真吾  撮影監督/ 江口裕祐  撮影助手/佐藤 遊・船場 幸平  録音/飯島花衣
美術/定塚由里香  編集/石川真吾  音楽/原 夕輝  8分/ホラー  ©2021 STONE RIVER

This film was made for the 48 Hour Film Project.
www.48hourfilm.com



チーム名【STONE RIVER】
作品名『Food 2.0』

#48時間映画祭
#48HFP
#Food2・0
48hourfilm.com/tokyo/

 


不安と眠気の 『Food 2.0』 48時間メイキング Part1 仲間集め編 - FilmMaker Ishikawa Shingo
不安と眠気の 『Food 2.0』 48時間メイキング Part2 仲間集め編② - FilmMaker Ishikawa Shingo
不安と眠気の『Food 2.0』48時間メイキングPart4 そもそも48時間映画祭とは何か? - FilmMaker Ishikawa Shingo

不安と眠気の 『Food 2.0』 48時間メイキング Part2 仲間集め編②

前回はこちら不安と眠気の 『Food 2.0』 48時間メイキング Part2 仲間集め編② - FilmMaker Ishikawa Shingo

 

撮影部と主演女優は見つかった。
しかしそれだけで映画が撮れるわけではない。

美術が映画を左右する

映画美術というのは映画の華であり、本質であると思う。
低予算自主映画出身のわたしの映画づくりに「美術」パートがいたことはない。昨年まではぜんぶ自分でやっていた。昨年撮った『スティグマ-Stigma-』にコロナでスケジュールが空いていた定塚由里香さんが参加してくださった。

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全編室内の映画で、20代前半の女性の部屋をつくる自信がわたしにはなかった。初めて美術部というものを雇った。結果は大正解だった。まず作業が減って単純に楽だったし、演出に集中できた。こちらにないアイデアをポンポン出してくれて大変ありがたかったし、楽しかった。定塚さんはとにかく雰囲気が良い。優しくて丸っこくてかわいい。発言にトゲがない。大酒飲みだというのもいい。普段は劇団☆新感線とか深田晃司組の美術とか売れっ子なので雇えてラッキーだった。さてしかし、今回はお仕事ではない。ノーギャラの、ある意味真剣な「遊び」だ。

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軽いノリで参加が決まる。
ありがたいぜ〜

しかし48時間映画祭は出たとこ勝負。48時間より前に会わないし、打ち合わせすらしない。映画美術は準備がすべてと言っても過言ではない。準備時間がなければ美術監督たちは何もできないのだ。またしても不安が募る。けっきょく定塚さんのパワーを発揮できないまま終わったりしやしないか。。。

 

頼りにしているレギュラー横須賀一巧

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(わたしが勝手思っているだけだが)石川組レギュラー俳優の横須賀一巧さん。48は2回、Stigmaにも出てもらっている。『GOLDFISH』にも出てもらっているし、成海花音さんとも面識はないが『ブレイブ』で共演していたようだ。

どうもわたしはクセが強い俳優が好きなようだ。
とにかく飄々として、大物と絡んでもブレないし、勉強熱心なんだがヘンにガツガツしてないところもいい。

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向こうから声をかけてきたんで仲間に入ってもらった。うれしい。しかし、こんだけ世話になっているのに、いい役をあげられるかどうかはまったく未知数だ。出たとこ勝負なんだから。不安だ・・・。

 

うまいこといかない俳優さんもいる

来るものは拒まず、去るものは追わず。たとえ長い付き合いでも、なんだか気持ちいい関係でいられない方もいる。

俳優と監督の関係というのは、恋愛に似ているのかもしれない。短い期間で愛情を燃やす。いずれ熱は冷める。恋人からパートナーに関係が変わっていく。愛し合った美点が憎たらしい汚点に変わってしまう。役割はどんどん変わっていく。恋人→夫婦→親と。人間関係を維持するのは本当に大変なものだ。友情や仲間意識などという不定形なものに頼るならなおさらだ。だから商業映画ではマネーの力を使う。マネーは平等だ。しかし アイ・ハブ・ノー・マネー。

この人と一緒に映画を作りたい、と思う時、脳内で起こっている感情のスパークはきっと恋と一緒のはずだ。
ときめきに死す
だんだん何を書いているのか分からなくなってきた。本題に戻る。

才色兼備・正統派美人・児玉アメリア彩

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江口っちゃんの事務所でカメラテストをするというので喜んで向かったら、来てくれていたのが彼女だ。児玉アメリア彩さん。とんでもない美人で驚いた。才色兼備とは彼女のことを言うのだろう。英語が堪能。踊りもできる。日本酒効き酒もできる。食レポもできて、演技もできる。さて、こういう正統派美人をどうしたら良いのか。逆に困った。この時点ではどんな映画を作るかノープラン。なんとなく、顔立ちから、ホラーっぽいものが彼女は似合うんじゃないかと思ったので、ホラーっぽいテストピースを撮っていた。

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彼女とコミュニケーションを取れたのも2時間くらいで、どんな方なのかよく分からない。サシでしこたま飲んだり、エチュードやらせまくったりしたい。・・・不安だ。

 

仲間集めの旅はまだ続く。

 

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www.youtube.com

 

ストーリー/行方不明になった父を探す女子高生。ようやくたどり着いた研究所で食べさせられたのは、世界を救うおにぎり。

 

出演/成海花音  横須賀一巧  免出知之 アライジン 柳生はる奈 美南宏樹 SHINYA 児玉アメリア彩

監督/石川真吾 脚本/宮本晴樹・石川真吾  撮影監督/ 江口裕祐  撮影助手/佐藤 遊・船場 幸平  録音/飯島花衣
美術/定塚由里香  編集/石川真吾  音楽/原 夕輝  8分/ホラー  ©2021 STONE RIVER

This film was made for the 48 Hour Film Project.
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48時間映画祭
プレミア上映会日程

6月12日(土)
会場:なかのZERO西館小ホール

上映時間
17:00 開演(16:30 開場)

1,000円/プログラム
石川真吾監督
チーム名【STONE RIVER】
作品名『Food 2.0』

#48時間映画祭
#48HFP
#Food2・0
48hourfilm.com/tokyo/

 


不安と眠気の 『Food 2.0』 48時間メイキング Part1 仲間集め編 - FilmMaker Ishikawa Shingo
不安と眠気の 『Food 2.0』 48時間メイキング Part3 仲間集め編・完 - FilmMaker Ishikawa Shingo
不安と眠気の『Food 2.0』48時間メイキングPart4 そもそも48時間映画祭とは何か? - FilmMaker Ishikawa Shingo

不安と眠気の 『Food 2.0』 48時間メイキング Part1 仲間集め編

今年で3度目の挑戦となる48時間映画祭。手慣れたもんだぜなどと思っていたら過去いちばんキツかった。これはその苦闘の記録である。 

エントリーするかどうか

昨年は不参加だったが今年はエントリーすることにした。

↓この時はまだウキウキしているアホである。

 

 

昨年(2020)は不参加だった。5月開催予定だったのが12月に延びたせいもあり、夏に『スティグマ』という短編を撮って、創作欲は解消できていたというのもある。そして……なんだかんだ言って新型コロナウイルスが怖かったのである。

なので、究極のコロナウイルス対策は、ひとりで撮ってひとりで編集することだろうと思っていたのだ。

ひとりで全部。やったことは、なくはない。

やってみたい。けど、ひとりって……さびしいよなあ。

48HFPの圧倒的な祝祭感の正体。それは「ノーギャラでもなんでもいいからなんか面白いことをやりたい!」という人々が短期間に集まる熱量である。

ひとりスタイルは、自分がこのまま嫌な感じのジジイになってからでいいや!

 

カメラマン探しの旅

というわけでまずは撮影のハルさん(PHOTOGRAPHER HAL氏)に声をかけた。氏は48時間映画祭に2度、長崎で撮った自主映画で1度、映画を一緒に撮っている。仕事でもさんざんご一緒させてもらっている盟友である。彼がいなければStone Riverは成り立たない。

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しかし個展のためスケジュール合わず!
爆死! しかもその個展、私もモデルとして出てたりするので無理も言えず。

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わたしのガラの悪さがよく出てますな

 

撮影部 江口裕祐 えぐっちゃん!

最近、REDのKOMODO 6Kという最新鋭のデジタルシネマカメラを買った、もう1人の盟友を思い出した。

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えぐっちゃん(江口裕祐)である。出会いは確か2008年くらい。かれはまだ業界入りたて、ペーペーの撮影助手のサードだかフォースだかだった。わたしは当時24歳。今の数億倍バカで生意気だった。えぐっちゃんはバックパッカーをやっていたからか、明るく楽しく、コミュニーションがうまい。とにかく気持ちいい奴なのだ。その後、数えきれないくらい現場を共にした親友である。その後カメラマンとして独立して、会社を立ち上げ、高価な機材をガンガン買って売れっ子になっていった。主にCMやVP。が、わたしとえぐっちゃんは監督とカメラマンという立場では初タッグであった。不安!

そもそも私を48時間映画祭にはじめて誘ったのはえぐっちゃんなのだ。2018年のCNSS加賀賢三組で、編集をやらないかと誘われて、48時間映画祭というものをわたしははじめて知った。加賀賢三くんも親友だし、かれの現場も参加したことがあった。それでも加賀組の編集をやるのは不安だったのだ。ノーギャラだし・・・。結局、加賀組を断って自分で監督してエントリーして、グランプリをかっさらってしまった。加賀くんには悪いことをした。今度かれの映画を手伝うんで帳消しにしてもらおうとも思っているが予算が厳しいんでまた断ろうかな。

 

俳優部

さて、カメラマンは決まった。さて、じゃあ、俳優部をどうしよう。

前2回の48HFPは基本的にこちらから、知っている俳優に声をかけていた。ワークショップで知り合ったり、撮影現場で知り合ったり、友達だったり。言い方は悪いが「ノーギャラで無茶苦茶な撮影に付き合ってくれそうな」人間を選んでいた。

要はチャンスに飢えていて、話がしやすい「いいやつ」を誘っていたのだ。100%自分の金で作る映画に、「いやなやつ」を呼びたくない。いいも悪いもすべて映画の現場はさらけ出してくれる。わたしは役者としてのスキルや知名度より、人間性を見る。ひそかに師匠と仰いでいる阪本順治監督の教えである。

とは言え、ノーギャラである。ノーギャラは48HFPの「ルール」とはいえ、毎回毎回、同じ人間に声をかけるのは忍びない。なので今年はこちらから俳優に声をかけることはしなかった。来てくれた役者はすべてSNSでのキャスト募集や、スタッフ/キャストの紹介である。たったひとり、成海花音さん以外は。

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新人女優・成海花音

成海花音さんとは今年の1月、『GOLDFISH』という映画のオーディションで出会った。探していたのはベテラン映画スターが演じる主人公の高校生の娘役。難役だった。わたしはチーフ助監督という立場で参加しており、オーディションでの演技の相手役もつとめていた。40人くらい会った中で、唯一ピンと来たのが彼女だった。藤沼伸一監督も同じ気持ちだったようだ。あとで知ったがシナリオの港岳彦さんも彼女の写真を見て自分が書いた映画の登場人物がいる!と思ったそうだ。

 

成海花音さんは相手の目をまっすぐ見る。目をそらさない。わたしはそのオーディションで相手役を演じ、そのでっかい瞳に魅了された。しかも、大物やコワモテの人間と交流させても物怖じしない。なんと彼女の母はホラークイーンの佐伯日菜子さん、父は元サッカー日本代表奥大介さんだ。わたしはお二人ともにファンだったので大変びっくりで光栄。撮影現場に佐伯日菜子さんがいらっしゃった時は嬉しかったな〜。

 

そして、成海花音ちゃんはとにかく明るくて性格がよいのだ。

またお仕事したいな〜って思う女優さんだった。

 

 

「またいつか」って、今かもしれない。

 

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だって 

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twitterで「いいね」くれたし

 

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主演女優をDMで口説くの図

 軽〜く「出ます?」とか言ってますねこのインチキ監督は。

この後所属事務所のVivienneにちゃんと依頼し、快諾してもらう。よっしゃ!

 

しかし『GOLDFISH』の看板ヒロインを借りてしまって、ヘタなものは作れないという不安が出てきた。

今年のテーマはDTS。

「出たとこ勝負」さ!

 

そんな気楽なことは言ってられなくなるのが48時間映画祭。 このエントリー続く。

 

 

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Food 2.0

 

ストーリー/行方不明になった父を探す女子高生。ようやくたどり着いた研究所で食べさせられたのは、世界を救うおにぎり。

 

出演/成海花音  横須賀一巧  免出知之 アライジン 柳生はる奈 美南宏樹 SHINYA 児玉アメリア彩

監督/石川真吾 脚本/宮本晴樹・石川真吾  撮影監督/ 江口裕祐  撮影助手/佐藤 遊・船場 幸平  録音/飯島花衣
美術/定塚由里香  編集/石川真吾  音楽/原 夕輝  8分/ホラー  ©2021 STONE RIVER

This film was made for the 48 Hour Film Project.
www.48hourfilm.com

 

48時間映画祭
プレミア上映会日程

6月12日(土)
会場:なかのZERO西館小ホール

上映時間
17:00 開演(16:30 開場)

1,000円/プログラム
石川真吾監督
チーム名【STONE RIVER】
作品名『Food 2.0』

#48時間映画祭
#48HFP
#Food2・0
48hourfilm.com/tokyo/

 



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