FilmMaker Ishikawa Shingo

「Hairs」「Food 2.0」「スティグマ-STIGMA-」「裸で汁を出すだけの簡単なお仕事です。」「ラジオスターの奇跡」「蘇りの恋」「カササギの食卓」「出発の時間」などの映画監督、石川真吾のブログです。

なぜ仕事をしなければならないのか?

大人なら仕事をするのが当然、という考え方があります。常識的な考えかもしれない。仕事をして、お金を稼いで、家族を養う。これが人間にとってまっとうな生き方だと。果たしてそうか?というのが今日のテーマであります。

 戦中や戦後の貧しい時代に生まれ育ってきた人々にとっては、「食べられるか否か」つまり「生きられるかどうか」が最も重要な問題であったので、「どう生きるか」に拘泥している余裕はあまりなかったのではないかと想像されます。
http://diamond.jp/articles/-/4275?page=2

現代人は飢えていない。食べ物には溢れていて、水はタダ同然。しかし食欲が満たされれば人間が充足できるかというと、そうではない。人間は生存の欲求よりも承認欲求のほうが強い生き物なのだ。承認を得られずに自死を選ぶ日本人が年間25,000人もいるのだ。

「労働」は比較的承認欲求を得やすいものだ。他者の役に立って対価をもらえる。戦後の日本の見事な復興は年功序列、終身雇用という手厚い共同体の保護によるものだ。親族も地域共同体も解体していくなかで、会社共同体が支えになっていたサラリーマンのおじさんは非常に多いと思う。

僕の父は元自衛隊員で現在は下水管の仕事をしていて、何度も仕事を替わっている。僕が仕事を放り投げてフラフラしていると「なんの仕事してもええけど、間が空くのがアカン」と言った。母は元保険販売員で現在はケアマネージャーだ。母の生家は農家をしていた。毎日コツコツ、節約しながら働き、4人の子供を育て上げた。長閑な田園と田畑で涵養されたコツコツ地味に額に汗しながら働くという労働観は、僕にはまったく根付かなかった。僕は18歳で大学進学とともに上京してしまったからだ。すでにぼくは複数のアルバイトをこなし、「欲しいものは自分のお金をつぎこんで買う」という浪費の味を知っていた。貯金するという感覚はまるでない。この話、まだまだ続きます。