FilmMaker Ishikawa Shingo

「蘇りの恋」「カササギの食卓」「出発の時間」「あさごはん」などの映画監督、石川真吾のブログです。

ポリアモリー/複数同時恋愛について考えてみた

インターネットで調べ物をしていたらこんな記事に出会った。
同時に複数と性愛関係…『ポリアモリー』広がる新しい愛のカタチ - NAVER まとめ

恋愛や結婚は1対1で行われるべきという、我々の価値観に深くインストールされた常識に反し、複数の異性と同時に恋愛関係を楽しむという概念が「ポリアモリー(polyamory)」である。不倫や浮気とは異なり、自分の交際状況をオープンにして合意を得た上で複数人と愛を構築するのだという。既婚者のポリアモリーもおり、アメリカでは約50万人のポリアモリーがいて増加傾向にあるのだとか。

「ポリアモリー」とはギリシア語の「複数」(poly)とラテン語の「愛」(amor)に由来し、アメリカで造られた造語である。1990年代初頭から「責任あるノンモノガミー(非一夫一婦制)」に代わる語として用いられるようになったとのことである。

この記事を読んで、これは一夫一婦制(モノガミー)への異議申し立てなんだろうな、と思った。ちょっと前に不倫SNS「アシュレイ・マディソン」がハッキングされたという記事を読んで、サクラばっかりだとしても「不倫には世界的なニーズがあるのだ」ということを強く感じたからだ。

アシュレイ・マディソンは、いわば既婚者の出会いサイトである。サイト上では「人生は短い。浮気をしよう」という文句と共に、結婚指輪をした女性が口元に人差し指をあてて、秘密のできごとへ誘う写真が掲載されている。

 ユーザーは登録後、ここでチャットなどを交わしながら相手を見定め、浮気の目的を達成するというしくみだ。サービスは、男性には有料、女性は無料だ。
(略)

不用意に職場のメールアドレスをそのまま使ったため、どこに務める人間かもわかってしまったケースも多々ある。本人が職場で気まずい思いをするのはもちろんのこと、成人が個人としてやっていることとは言え、企業としてもみっともないことになる。たとえば、スポーツ専門ケーブルテレビ局のESPNでは、100人以上の同社員が登録していたと伝えられている。

 もっとまずいのは、軍や政府関係機関である。分かっているだけで、陸軍関係者が6700人、海軍は1600人、またバージニア州政府関係者が104人、国土安全保障省のお役人も45人いたという。

 特に、米軍の軍事司法統一法典では姦通が犯罪と見なされることもあり、現在調査が進められているという。それ以外にも、大学教授、教員、ジャーナリスト、弁護士、イギリスの議員なども、明らかにされた登録ユーザーとして挙げられている。

 また、この情報漏洩が原因で少なくとも2件の自殺があったと伝えられ、トロントの警察が調査中らしい。その1人は、テキサス州の警察署長だ。

アシュレイ・マディソン不倫情報流出で晒された人々の様々な「昼の顔」 (ダイヤモンド・オンライン) - Yahoo!ニュース

正直に告白すると、僕もかつて結婚をしていたときに、不倫を夢見たことがあった。2年くらい前だったか、アシュレイ・マディソンの広告をインターネット上で見つけ、ちょっと心が動きかけたのだった。ストレスの多い結婚生活をしていた僕には「人生は短い。浮気をしよう」というキャッチコピーは魅惑的だった。貧乏だったのが幸いして(?)、登録はしなかったが、この話題に共感してくれた妻帯者の友人は、2人ほどいた。

これは多くの科学者も発表しているが、そもそも一夫一婦制というのは、人間の本質ではないのではないか。(略)結婚している人たちの中には、その状態にハッピーではなく、婚姻生活にとらわれていると感じている人たちも少なからずいる。(略)
これまでの経験、データからハッキリわかってきたのは、本質的にはカナダだろうが、アルゼンチンだろうが本質的には男女は同じということ。どの国においても、不倫に走るトップ2の理由は、パートナーとの感情的つながりの不足と、ラブライフ、端的に言えばセックスが充実していないことだ。

【アシュレイ・マディソン 国際事業ディレクター クリストフ・クレイマー】
「不倫ビジネス」が成功?世界最大サイトの謎 | インターネット | 東洋経済オンライン | 新世代リーダーのためのビジネスサイト

一夫多妻制(ポリガミーpolygamy)はヒト以外の動物にも確認されている。チンパンジー、ゴリラ、ゾウアザラシ、アシカなどである。そういえば、カマキリのオスは生殖を終えるとメスに食われ、サケのオスは生殖後に死んで川を流れる。人間のオスも生殖の後「不要」になるから暇を持て余して戦争をしたり宗教をつくったり国家をつくったりするのかもしれない。

一夫多妻制といえばイスラーム圏が有名であるが近代化に伴って減少傾向にあるようだ。日本にも側室制度があったが跡取りを産む目的であって、しかも上流階級に限る。モルモン教原理主義者は未だに一夫多妻制を続けているらしい。

結婚は制度で契約でしかない。不倫は文化かもしれないがリスクが高い。複数人と性愛を楽しむことを正当化するために登場したのがポリアモリーなのだろう。重要なのは「新しい愛の形」と公言していることだろうと思う。結婚というのは愛を保証するものではない。家庭では「汚いもの」を管理しなければならない。子供のおむつ、汚れた旦那のパンツ、便器に飛び散った小便、妻の使用済み生理用品、生ゴミ……。結婚をテーマにしたデヴィット・フィンチャー監督の傑作映画『ゴーン・ガール』を観て、僕が得た教訓は「夫婦というのは互いに演じ合わなければいけない」というものだった。最も殺人が行われる場所はどこか?家庭である。

だが、ポリアモリーは日本では普及しないだろう。日本人ポリアモニストのブログやtwitterをいくつか拝見したが、世間と戦っている苦悩が見て取れた。ポリアモリーは大都会に住み、かつ高所得でマネジメント能力の高い人でないとできないだろう。決して快楽主義者というわけではない。恋愛について真剣に考え、新しい愛の形を模索する良識ある人々だ。愛に順位もつけないし嫉妬も嘘もなし、というのは求道的な精神だ。感動すら覚える。しかしポリアモニストはLGBTよりも性的にはマイノリティに位置付けられるだろうし、パートナー探しも苦労するに違いない。日本は結婚も恋愛もただ一人とするものという「常識」の価値観が強い。異物は「世間」の力で排除される。

でも僕はポリアモリーの価値観に惹かれているのだ。
しかし、

嫉妬心のない女性などいないし、順位をつけない男性もいない。

僕の狭小な価値観ではこんな結論だ。それに単数異性愛者であるほうがパートナーと出会える可能性が高い。と信じている。ああ、再婚したい。

ポリアモリー 複数の愛を生きる (平凡社新書)

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