FilmMaker Ishikawa Shingo

「蘇りの恋」「カササギの食卓」「出発の時間」「あさごはん」などの映画監督、石川真吾のブログです。

PFF2015『いさなとり』『幽霊アイドルこはる』『最前線物語』

PFFの歴史は日本映画の斜陽の歴史である


今日は第37回ぴあフィルムフェスティバル(PFF)に行った。
PFFは自主映画の映画祭だ。もう37回もやっているのか。PFFの歴史は日本映画の斜陽化の歴史でもある。日本映画の黄金期を支えた撮影所が崩壊し、観客がテレビに流れていくなか、映画会社はエロとグロと暴力で映画館を賑わせたが、一般客は離れた。一般客が映画館から遠ざかってきた時代に「自費で」映画を作る連中が現れ出し、新人映画監督の登竜門状態となったのが初期PFFである。PFF出身の映画監督は数知れない。黒沢清園子温平野勝之、有馬顕、石井裕也石井聰亙佐藤信介……。斜陽化した映画業界は新人を育てることをやめ、自主映画界で名を成した者を商業映画に釣り上げる流れを作った。PFFの審査員は小説家、俳優、音楽家、映画監督、そして映画プロデューサーである。映画を作りたいがコネがない若者が業界の人間と接するチャンスを得るのが自主映画祭である。夢を追いたい若者と、新しい才能を発見したい業界人の需要と供給がマッチする場なのである。撮影所の崩壊は昔話となり(僕も当然リアルタイムでは知らない)映画学校が乱立するようになった。業界の新人も、PFF入選作家もたいていが映画学校出身である。僕もそうだし、先輩も後輩もたっくさんいる。彼らは「映画という夢」の放つ甘い香りに吸い寄せられる蛾である。蝶になれるのは一握りだ。PFFで上映される作品は、荒木ディレクターの好みなのか分からないが、辛辣なものが多くて、エンタメは数少ない。タコツボ化した自主映画界は、仲間うちで批判しあい、褒め合うサークルと化した。PFF以外も、映画祭が乱立した。それでも、ぼくのような自主映画をやっている人間からすれば、PFFほどありがたい映画祭もない。サポートも礼儀正しいし、抜群にお金と手間をかけて自主映画を応援してくれている。

PFFアワード2015入選作品を発表します。|PFFニュース

『いさなとり』藤川史人監督作品


広島県三次市に2年住んでつくられたドキュメンタリーとドラマの中間のような映画である。物語の軸になるのは中学生たちの友情、鯨取り、祖母の死、母の再婚相手との確執である。
数週間ロケハンしただけではぜったい得られないであろう、風景の美しさが確かに刻まれていた。監督が2年も住んだだけあってロケーションや人物の選び方に説得力がある。祭り、花火、生と死と、鯨のいた街の歴史が描かれていく。ほかに似ている映画をちょっと思いつかない。藤川くんにしか撮れない退屈な映画だと思った。退屈というのは褒め言葉である。刺激に溢れた現代にあって、「退屈さ」を売りにできるのは貴重である。藤川くんは次はペルーに3年住んで映画をつくるらしい。凄い行動力だ。見習いたい。

『幽霊アイドルこはる』井坂優介監督作品


アイドル志望の自殺した女子高生が、幽霊として現世に蘇り、いじめられた同級生や親に復讐する話である。女子高生「こはる」は、霊感がある人だけに見えるアイドルとして活躍するというコメディホラーである。復讐の手段が多様だともっとよかったと思う。ホラー映画好きとしては非常に楽しめた。

『最前線物語』サミュエル・フラー監督作品

紛れも無い、傑作戦争映画だと思った。従軍経験者特有の生々しさがあった。上陸する際に銃口にコンドームを被せるだとか、地雷で仲間があっけなく死ぬとか、戦車の中での出産シーンで指にコンドームを着けて分娩するとか、ユダヤ人の戦争孤児の左手には認識ナンバーが彫られていたりとか。スピルバーグの「シンドラーのリスト」や「プライベート・ライアン」と比べると、サミュエル・フラーの独特さが際立つ。スピルバーグは従軍経験のない戦争オタクだ。サミュエル・フラーはジャーナリストだ。戦争のありのままを克明に描いたドキュメンタリーとも言える。スクリーンで観れてよかった。出産シーンは泣いた。リー・マーヴィンの男気にも泣けた。第二次世界大戦が終戦して4時間後にリー・マーヴィンが撃ってしまったドイツ兵を必死に助ける。「こいつは生きなければならないのだ」と。傑作だった。スクリーンで観れてよかった。

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